社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

高年齢者雇用安定法の改正に伴う就業規則の見直しのポイント

2013.02

今年の4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行されます。大きな改正内容は、次のいずれかの対応による65歳までの雇用の義務化です。

  1. 定年年齢を65歳まで引き上げ
  2. 対象となる者の基準を廃止し、解雇事由や退職事由に該当しない限り、希望者全員を65歳まで再雇用等、継続雇用制度を適用する
  3. 定年の定めの廃止(定年を設けない)

改正の目的は、平成25年4月から平成37年3月31日までの間で、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的65歳に引き上げられることあります。
これにより60歳以降65歳までの間で年金が支給されない無年金期間が生じ、その間に仕事も定年や再雇用されずに退職してしまうと、収入の道が途絶えることになります。
そのような無収入期間が発生することを防止するため、事業主に65歳までの雇用の確保を義務付けることが改正の主旨となります。
今回は、改正に伴い就業規則の見直しが必要となる企業のために、就業規則の改定のポイントをご紹介します。

(1)就業規則の見直しが必要となるケース

今回の改正で、就業規則の見直しが必要となるケースは、定年年齢が60歳のままで、希望者のうち一定の基準をクリアした者だけを65歳まで再雇用等により継続雇用する定めをしている企業の場合になります。
ですから、既に定年年齢を65歳に引き上げている企業や、希望者全員を65歳まで再雇用する定めを就業規則でしている企業は、見直しをする必要はないことになります。

(2)継続雇用制度を選択した場合の対象者の基準廃止における経過措置

「再雇用などの継続雇用制度を適用する場合、対象者に基準を設けている場合はその基準を廃止し、希望者全員を65歳まで雇用することが義務付けられるわけですが、今回の改正では平成37年度まで経過措置が設けられます。
この経過措置は、先にも述べました平成25年4月から段階的に65歳まで引き上げられる年金支給開始年齢に応じて、年金支給開始年齢までの間にいる者には、再雇用等の対象となる基準を設けることを禁止し、希望者全員を対象とし、年金支給開始年齢に到達以降、65歳までの期間の中にいる者については、今までどおり再雇用対象者に基準を設けても構わないというものです。

(3)老齢厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げ

(あくまで年金が支給される引き上げ期間と年齢であり、下記の期間および年齢以降の雇用継続義務がなくなるわけではありません)

段階的引き上げ期間 年金支給開始年齢
平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間 61歳
平成28年4月1日から平成31年3月31日までの間 62歳
平成31年4月1日から平成34年3月31日までの間 63歳
平成34年4月1日から平成37年3月31日までの間 64歳
平成37年4月1日以降 65歳

(4) 就業規則見直しのポイント

定年を65歳に引上げたり、希望者全員を65歳まで継続雇用する対応をしようという企業は、就業規則の改定もさほど大変ではありませんが、(2)、(3)の経過措置により、年金支給開始年齢以降について、対象者に基準を設け再雇用することを考えられている企業にとっては、基準の設定や経過措置に対応した年齢の定めが必要になります。
なるべく早めに就業規則の見直しをされることをお勧めします。