労働法の基本講座第4回「賃金」その1
2013.06今回は、賃金について、労働法および労務管理の実務的な視点から解説します。
1. 賃金とは?
労働基準法で「賃金」とは、賃金、給与、手当、賞与、その他名称の如何を問わず、労働のその対償として使用者が労働者に支払うすべてのものと定義されています。
会社が社員から労務の提供を受け、その見返りに支払うものが賃金です。労働の対償として支払うものが賃金ではありますが、直接労働の対償とならない「家族手当」、「住宅手当」、「通勤手当」「弁当代」や「休業手当」なども賃金に含まれます。
2. 賃金とならないもの
次のものは、賃金には含まれません。
- 退職金、慶弔見舞金など恩恵的、任意的に支給されるもの
- 解雇予告手当
- 出張旅費、日当
- 確定拠出年金、中小企業退職金共済などへの拠出金
- 休業補償
3. 賃金支払いの5原則
(1)通貨払いの原則・・・賃金は、通貨で支払わなくてはなりません。例外として、労働者の指定する金融機関への振込による支払いと労働協約に基づく現物(商品、食事など)給付などが認められています。
(2)直接払いの原則・・・賃金は、労働者本人に直接支払わなければなりません。
親や代理人への支払いもできません。例外として、労働者の指定する金融機関への振込による支払いが認められています。
(3)全額払いの原則・・・賃金は、その全額を支払わなければなりません。例外として、法令で定められた税金や社会保険料、労使協定により定められたものを控除して支払うことは認められています。
労働者の希望や合意などの自由意思に基づく場合で、使用者が労働者への貸付金等の債権を賃金から相殺控除することは全額払いの原則に違反するものではありません。
本人事労務便り4月号で説明しましたが、賃金計算期間を跨いだ振替、代休の処理にも関わらず、賃金から振替分や代休取得を前提に休日勤務分の賃金を相殺することは、この賃金全額払い違反になります。
(4)毎月一回以上払いの原則・・・賃金は、月に1回以上支払わなければなりません。
毎月1回以上ですので、日払いや週払いはOKです。
年俸制であってもこの原則は適用されます。
(5)一定期日払いの原則・・・一定の期日に支払わなければなりません。
支払われる日を労働者が特定できるようにしておく必要があります。
毎月第三水曜日・・・× 毎月15日・・・○ 毎月月末・・・○