雇用形態を変更する際の留意点
2014.12企業の労務管理において、様々な理由から社員の雇用形態を変更することが最近、増えています。今回は、その際の留意点について解説します。
主な雇用形態変更パターンと留意点
(1)正社員からパートタイマ
育児や家族の介護等、やむを得ない理由により、長期間にわたりフルタイム勤務、転勤・配置転換、残業などの正社員としての就業が困難な場合に、勤務時間を短縮したり、従事する業務を定型業務中心にしたりすることに伴い、雇用形態も時間での勤務が可能なパートタイマーに変更するパターンです。併せて給与についても月給制から時給制に変更します。このパターンでは、社員側の給与等の重大な労働条件の変更を伴いますので、社員と合意の上で行うことが必須となります。
(2)正社員から契約社員へ
契約社員に変更する場合、業務を特殊業務や専門的な業務に特定し、または一定の期間で目的が達成されるような業務等に従事させる場合などに用いられます。一般的に有期雇用契約となることが多く、この場合労働条件の不利益変更を伴うケースがほとんどです。(1)同様、社員の合意のもと行うことが絶対条件となります。また、不利益変更を伴うだけに給与等を厚遇にしたり、勤務地限定にするなど社員側に契約社員になることに対するメリットを提示できることが必要となります。
(3)正社員から短時間正社員へ
短時間正社員とは、育児・介護等の理由により正社員に比して労働時間を短い社員をいいます。基本的に給与体系等は変えず、賞与や退職金も正社員同様適用し、正社員としての身分を保証します。この場合、給与については時給制に変更せず、月給制のまま、労働時間が短くなる分固定的給与を比例按分して減額することになります。賞与や退職金についても同様の算定方法をとります。
(4)パートタイマー・契約社員(以下「パート等」といいます)から正社員へ
いきなり正社員として雇用せず、パート等として試用的な期間を設け、適性を見極めたのち正社員へ登用する企業が増えています。この場合の留意点は、会社の制度として正社員登用を希望するパート等に公平に正社員転換のための機会を与え、客観的で公平な登用基準や登用のための試験等の手続きを取ることが求められます。そして正社員登用しないパート等をどのくらいの期間雇用するのか戦略的に制度設計し、就業規則等に定めることが求められます。また、キャリアアップ助成金等の活用も大切です。
(5)正社員から定年後の嘱託再雇用社員へ
定年後、65歳までの雇用継続として再雇用するケースです。この際、定年時の労働条件を踏襲する必要はなく、労使双方の合意のもと自由に労働条件を設定できます。一律にパート扱いなどにするのではなく、対象となる社員の特性や健康状態等により条件設定をする必要があります。また、再雇用者間の不公平感をなくし、企業の有効な人財として活用するため一定の基準のもと再雇用後の雇用形態を制度としてコース設定するなどの工夫が求められます。
(6)派遣社員から正社員へ
派遣社員を直接雇用するケースです。労働者派遣法に基づき、派遣社員の派遣可能期間の制限を確認し、直接雇用しなければならないルールを確認します。また、直接雇用する際には、派遣契約に基づき派遣会社との話し合いや紹介料等の費用が負担必要です。
※前回号でご案内しました労働者派遣法の改正案は、今臨時国会で成立しませんでしたのでお知らせします。