社員に対する給与の減額
2014.09今回は、最近よく問い合わせをいただく、会社が社員に対して行う給与の減額について、その類型と内容を解説します。
1.減給の制裁
減給の制裁とは? 減給の制裁のルール
減給の制裁とは、懲戒処分の一つです。社員が就業規則などに定められた懲戒処分事由に該当する行為を行ったりした際に、その制裁の程度により、給与から一定の額を減額するものです。ペナルティとしての罰金的な意味合いのものですので、1事案につき1回のみ行うことが可能です。
減給の制裁に該当する事由およびその内容は、やはり就業規則に定められた内容によります。ただし、無制限に減給の制裁を行えるわけではありません。労働基準法に減給の制裁を行う場合、つぎのような制限が定められています。
・減給の制裁に該当する事案について、1事案につき給与日額の半額が上限
・一定期間内に減給の制裁に該当する事案が複数ある場合は、月額給与の10%が上限
先にも述べましたが、減給の制裁は、1事案について1回のみ行えます。ですからある制裁事案について、数か月間にわたり減給の制裁を行うことはできません。「減給○ヶ月」などということをよくニュースで耳にしますが、これは労働基準法が適用されない公務員や会社の役員などの話です。
2.給与の減額改定
給与の減額改定とは? 減額改定を行うために
育児・介護休業法に定められた育児休業期間は、養育する子が原則、1歳に達する日(1歳の誕生日の前々日)まで取得することができます。また、夫など配偶者が養育する子の育児休業を取得している場合で、妻も育児休業をする場合など一定の要件に該当する場合は、子が1歳2か月に達するまで休業できます。さらに子の保育所等への入所を申し込んでいたが、空きがなく入所できない場合は、子が1歳6か月に達するまで育児休業の取得が可能です。
3.育児休業給付金の受給額
では、何か重大な問題を起したり、会社に多大な損害を被らせた社員に対して、一定の期間もしくは長期間にわたって給与を減額することはできないのでしょうか?会社の要望に応えるには、給与の減額改定を行うことが考えられます。
給与の減額改定は、懲戒処分ではなく、文字通り給与を改定するわけですので、ある特定の月の給与に限定されず、次の給与の改定が行われるまで継続されることになります。
減額改定の幅ですが、年収ベースで10%程度に収めることをお勧めします。減額幅が10%を超え、社員がそれを理由に退職した場合、会社都合退職になる可能性があるからです。
所謂、給与改定は、就業規則や給与規程などの定めに基づき、通常は年に1回とか四半期に1回とか、会社の人事評価や目標管理制度に基づいて、通常は、社員の給与のベースとなる基本給などを見直します。この年1回の給与の改定のほかに、社員が重大な問題行為を働いたときや、会社に損害を与えたときは、通常の人事評価とは別に社員の給与(基本給など)を査定し直し、減額の改定を随時、行うことを就業規則や給与規程に定めておかなければなりません。
3.降格人事に伴う給与の減額
最後に挙げるのが、降格人事に伴う給与の減額です。社員が問題や不祥事を起こした際に、役職不適格として降格人事を行うことがあります。例えば、課長職であった社員が問題を起こし、課長職を解かれ係長に降格した場合、それに伴い課長職に支給されていた役職手当の額が、当然、係長職に対する役職手当の額に変更されます。
こうした降格人事に伴う給与の減額は、これまで説明してきた給与の減額とは違い、ある意味当然行われることになります。ただし、給与の減額改定同様、就業規則に必要がある場合は、随時、昇格、降格人事異動を行うこと、人事異動により役職に変更があったときは、自動的に役職手当も変更することを定める必要があります。