労働法の基本講座第3回 「時間外勤務と割増賃金」
2013.05今回は、時間外勤務について、労務管理の実務的な視点から解説します。
1. 時間外勤務とは?
時間外勤務とは、会社が定めた1日または1週間の所定労働時間外に勤務をすることです。1日8時間または1週40時間の法定労働時間を超えて勤務すると法定時間外勤務となります。また、法定労働時間は超えていないが、会社の所定労働時間を超えて勤務した場合は、法定内の所定時間外勤務となります。1日の所定労働時間が1日7時間の会社で、7時間を超えて法定労働時間の8時間までの1時間が、この法定内所定時間外勤務にあたります。
2. 時間外勤務は、1日単位、1週単位、1月単位でカウントします。
また、時間外勤務は1日単位だけではなく、週単位でもみます。先に述べましたが、労働基準法が定める法定労働時間は、1日8時間、1週40時間です。1日の勤務時間が8時間ちょうどの場合、1日の時間外勤務は発生しませんが、この勤務を週に6日行うと、週としては48時間の勤務となり、8時間の時間外勤務をしたことになります。例えば土日休みの会社で土曜日または日曜日に勤務した場合があたります。土日どちらも8時間勤務した場合は、いずれかの8時間が時間外勤務、もう一方の8時間が法定休日勤務となります。その他、時間外勤務を月でカウントする場合もあります。例えば、1ヶ月変形労働時間制(*1)を採用する場合は、1日および1週、そして1ヶ月の勤務時間で時間外勤務をカウントします。
3. 1ヶ月単位の変形労働時間制(*1)とは?
2でも説明しましたとおり、労基法では、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることはできません。ただし、就業規則または労使協定で1ヶ月の起算日やその期間の各日ごとの始業・終業時間などの決定方法を定めることで1ヶ月を平均して週40時間の範囲におさまれば、その月の特定の日に8時間を、または特定の週に40時間を超えて勤務させることができる制度です。例えば、月初は暇だけれど月末は忙しく勤務時間が長くなるような会社に適した制度です。1ヶ月単位の変形労働時間制では、ある日の勤務時間を10時間で設定しある週の労働時間を50時間で設定することが可能です。ただし、その時間を超えて勤務した場合は、時間外勤務となります。また月の総勤務時間が、法令で定めた月の暦日数が(1)28日の月は160時間 (2)30日の月は171時間 (3)31日の月は177時間を超えた場合も時間外勤務となります。
4. 時間外勤務と三六協定
法定時間外勤務を社員にさせる場合は、社員の過半数を代表する者と労使協定を結び、時間外勤務をさせる事由、職種、対象者数、法廷時間を超えて勤務させることができる時間などを定め、労働基準監督署に届出する必要があります。この労使協定を労働基準法第36条に定められていることから三六協定とよんでいます。三六協定で定められる時間外勤務時間の限度は、1月45時間、1年360時間となっています。
5. 時間外勤務と割増賃金
法定時間外勤務をさせた場合は、法定の率で割増した割増賃金を支払う必要があります。割増率は、時間外勤務(1.25倍)、法定休日勤務(1.35倍)、深夜勤務(0.25倍)となります。時間外が深夜に及んだ場合は、1.5倍、法定休日の深夜に勤務したときは、1.6倍の割増賃金となります。また、中小企業以外の企業は、月の勤務時間が60時間を超えて時間外勤務をさせたときは、60時間を超えた時間については、1.5倍の割増賃金を支払わなければなりません。なお、法定時間は超えていないが、会社が定めた所定労働時間を超えたときは、割増しは不要ですが、その時間分の時給相当額を支払うことになります。