社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

退職理由と雇用保険の失業給付(その1)

2014.01

2014年も人事・労務全般の法令情報やトピックス、事例の紹介など有益な情報を提供させていただきます。

1. 退職理由と失業給付の受給者の区分について

退職し、失業状態になると在籍中に雇用保険に加入していた方は、受給の資格を満たせば、基本手当という失業給付を受けることができます。その際に、退職理由により受給者として次の通り、3つに区分されます。

(1)通常の受給者(いわゆる自己都合退職者など)
定年退職者や自己都合退職者、契約期間満了による退職者、懲戒解雇されての退職者など。

(2)特定受給資格者(いわゆる会社都合退職者など)
●倒産・解雇等の理由により、退職した者●会社の退職勧奨に応じて退職した者●会社の移転のため通勤困難となり退職した者●会社の賃金遅配が2か月以上続いたため退職した者●給与が85%未満に低下したため退職した者●退職前の3か月間に残業時間が連続で45時間を超えたため退職した者●危険な場所や健康障害の恐れがある状況で就業を強いられ退職した者●3年以上引き続き雇用された有期雇用労働者で、契約更新がされずに退職した者●雇用契約の際に契約が更新されることを明示されたにもかかわらず、更新がされずに退職した者●故意の排斥、冷遇、いじめ、嫌がらせを受けたため退職した者●業績不振などの会社都合により休業が3ケ月以上続いたため退職した者●事業所の業務が法令違反のために退職した者など。

(3)特定理由離職者(やむを得ない理由による退職者など)
●有期雇用の労働契約が満了し、更新を希望したにもかかわらず更新が合意に至らず退職した者(特定受給者に該当するものは除く)●体力不足、疾病、心身障害等の理由により退職した者●妊娠、出産、育児等のため退職し、失業給付の受給期間延長措置を受けた者●家族の死亡、扶養、看護など家庭事情の激変のため退職した者●単身赴任者などで扶養家族との別居生活が困難になり退職した者●結婚、育児、自分の意思に反する転居、交通機関の廃止や運行時間の変更、転勤、出向による家族との別居回避のため、配偶者の転勤や就職による別居回避のため、などの理由で通勤が不可能または困難になり退職した者など。
これらの区分により、失業給付の受給資格要件や受給開始時期、基本手当の給付日数が異なります。退職の理由は、失業給付の受給において大きな影響があります。次号で詳しく解説します。

2. 受給者の区分の判定は?

1に挙げました受給者区分の判定は、離職票の離職理由欄の内容により、ハローワークが行います。必要に応じて労働契約書、退職願、解雇予告通知書、賃金台帳、出勤簿など確認書類の提示や、会社に対して事実関係の確認を求め判定します。

3. 失業給付を受ける要件は?

失業給付を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。

  1. ア)自己都合による退職者は、退職の直前2年間に12か月以上、雇用保険の加入期間があること。
    (雇用保険の加入期間は、1ヶ月に11日以上、給与支払いの基礎となった日数がないと、その間雇用保険に加入していないと、加入期間1ヶ月とカウントされませんのでご注意ください)
    イ)会社都合による退職者または、やむを得ない理由で自分から退職を申し出た者は、(1)の要件が退職直前1年間に6ヶ月以上、雇用保険の加入期間があればよくなります。
  2. 退職後も働ける状態で、働く意思があり、職探しをすること。

次回は、受給者の区分による受給内容の違いや受給以外に影響が及ぶ事項について解説します。