社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

労働法の基本講座第8回「管理監督者」

2013.12

今回は、労働基準法上、時間外勤務や休日勤務の適用から除外される「管理監督者」について解説します。

1. 労働基準法上の管理監督者とは?

労働基準法第41条第2号に定められる管理・監督の地位にあるものは、同法に定める労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないことになっております。簡単に言えば、時間外や休日(深夜勤務を除く)に勤務を行っても、それらの割増賃金も支払いの対象外となる労働者ということになります。

2. 管理監督者の考え方

企業が人事管理上又は営業政策上の必要等から設定、任命する職制上の役職者であれば、すべてが労働基準法上の管理監督者として労働時間・休憩・休日の例外的な取り扱いが認められるというわけではありません。それらの役職者の中でも、労働時間・休憩・休日に関する規制の枠を超えて活動されることを要請せざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務実態も労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限り、労働基準法第41条の適用除外の取り扱いが認められるということです。

3. 管理監督者としての判断基準

過去の判例によりますと管理監督者とは、その判断基準として次のような要件が挙げられます。

  1. 労務管理方針の決定に参画している
  2. 労務管理上の指揮命令権限を有し、経営者と一体的な立場にある
  3. 自己の勤務について自由裁量の権限をもち出社退社について厳格な制限を加えられない地位にある
  4. その地位に関し、何らかの特別な給与が支払われている
  5. 上記について、その役職名にとらわれず実態で判断すること

上記の要件では抽象的な点もあります。より具体的な要件に置き換えますとつぎのようになります。

  1. 職務内容が少なくともある部門の統括を行う立場にあること(統括部長、本部長、支社長、支店長、工場長など)
  2. 部下の労務管理上について決定権または裁量権があること(人事権、採用権、人事考課権限など)
  3. 管理職手当などにより、時間外手当等が支給されなくても補って余りある給与が支給されている
  4. 自己の出退勤時間を自ら決定できる権限がある

管理監督者判断における判例として、上記の要件を問われ、管理監督者に該当せず、所謂「名ばかり管理職」と認定され未払いの時間外手当や休日勤務手当支払いを命ぜられた「日本マクドナルド事件(東京地判平20.1.28 労判953号10頁)」や「ゲートウェイ事件」や「東和システム事件」などがあります。

4. 管理監督者の深夜勤務と割増賃金

管理監督者は、労働時間・休憩・休日の規制の適用を受けませんが、深夜勤務については、割増賃金を支払わなければなりません。法定の割増率は、時給単価の0.25%です。月に特定の時間分の見合い深夜勤務手当を管理職手当等の手当に含める形で、毎月固定的に支払う方法が多く取られています。

5. 「管理職手当等」の考え方

管理監督者に支給する管理職手当や役職手当等については、主に二つの性格付ができます。
(1)一定時間見合い分の時間外勤務に対する固定割増賃金としての性格
(2)役職に応じた職務内容や責任に対する報酬としての手当管

理職手当等について上記の両方の性格を併用して支給する場合範囲は、万が一、管理監督者性を否定された時のためにも、割増賃金相当部分とそれ以外の賃金部分とを明確に分けておくことが重要です。