労働法の基本講座第7回「労働条件の明示」
2013.11今回は、社員を採用する際に義務付けられている労働条件の明示について解説します。
1. 労働条件明示義務
労働基準法第15条1項では、次のように定められています。
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と定められています。また、明示の方法は、特に重要な労働条件については書面の交付で行わなければならないとされています。特に重要な労働条件とは、「絶対的明示事項」といい、それ以外に会社に決め事があれば明示しなければならない労働条件を「相対的明示事項」といいます。
2. 絶対的明示事項と相対的明示事項
絶対的明示事項には次のような事項があります。
- 労働契約期間に関する事項
- 就業場所及び従事すべき業務に関する事項
- 始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算及び支払い方法、賃金の締切日及び支払日、昇給に関する事項
- 退職(解雇事由を含む)に関する事項
相対的明示事項には次のような事項があります。
- 退職手当(退職金)
- 臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるものに関する事項
- 労働者負担の食費、作業用品等に関する事項
- 安全及び衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰及び制裁に関する事項
- 休職に関する事項
3. 具体的な労働条件の明示
労働条件については、書面で明示することが求められますが、具体的には次のような書面にて明示します。
(1)労働契約書(内容確認の上、労使双方が署名捺印します)
(2)労働条件通知書(労働者に内容を確認してもらい、確認の上、入社する旨書面で返してもらいます)
(3)就業規則(就業規則だけでは事足りないので、(1)または(2)とセットで行うことが望ましい)
4. 労働条件明示のタイミング
よくある質問として、労働条件の明示のタイミングがありますが、採用の内定(決定)から入社日までの間に行えばよいとされています。入社日を過ぎてから労働条件を明示するケースが見受けられますが、入社後の労働条件の祖語によるトラブルを防ぐためにも入社日までの明示を徹底してください。
5. 有期雇用契約の更新時おける労働条件の明示
有期雇用契約の更新における労働条件の明示については、従前と労働条件に変更がない場合でも、書面による明示を行います。有期雇用契約の場合は、自動更新でない限り、その都度、契約書の取り交わしをすることが、契約期間満了時の雇止めトラブルを防止するためにもお勧めします。