社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
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退職理由と雇用保険の失業給付(その3)

2014.03

今回は、退職理由と雇用保険の給付および関連事項についての最終回です。

1. 退職者による退職理由の異議申し立て

前二号で解説しました通り、退職者にとっては会社都合退職などにより特定受給資格者になるか、ならないかで失業中の失業給付の内容や受給額に大きな違いが出てきます。このため、退職者が失業の認定を受ける際に離職票に記載された退職理由について異議申し立てをするケースが非常に増えています。以下、退職者からでた異議申し立ての事例をご紹介します。

事例1. 自ら退職願を提出したが、実は上司からお前は使えないから辞めろと、再三、退職勧奨を受けたための退職であった。

事例2. 自ら退職を願い出たが、上司や同僚からの嫌がらせやいじめを受け、精神的に追い詰められ辞めざるをえなかった。

事例3. 長時間の残業が続き、肉体的にも精神的にもまいってしましい、やむを得ず退職を申し出た。

事例4. 採用時に提示された給与額と実際に入社して支給された給与額に大きな違いがあり、この給与額では生活できないので退職した。

事例5. きちんとした人事評価制度がないにも拘わらず、人事評価が悪いことを理由に給与を3割減額されたため生活に困り転職しようと退職した。

これらの異議申し立てにより、ハローワークは労使双方の言い分や確認書類を求めることで、退職者の意義申し立てに正当性や合理性があると認めたときは、離職票の退職理由に拘わらず会社都合の退職とし特定受給資格者として認定することがあります。

2. 特定受給資格者を出すことによる企業側のデメリット

会社が特定受給資格者となる退職者を出すことのデメリットとして、次のようなものが挙げられます。

  1. 厚生労働省管轄の助成金を受けている、または受けようとしている会社は、特定受給資格者を出すと助成金の支給が停止、または将来に向かって受けられなくなります。
  2. 雇用促進税制の適用を受けようとする法人、個人事業主は特定受給資格者を出すことにより税額控除の適用を受けられなくなり、また新たな雇用促進計画も出せなくなります。
  3. 特定受給資格者をあまり多く出す企業については、ハローワークや労働基準監督署の調査の対象となることがあります。
  4. 特定受給資格者を多数出すと、求人をする際にハローワークの情報としてブラック企業の扱いを受け、求職者の紹介を敬遠されることがあります。

以上のようなデメリットがありますので、企業側としてはなるべく会社都合による退職者を出さないようにしたいものです。また企業の事業主の中には、自己都合で辞める社員であっても、失業給付をすぐ受給できるよう、または受給額が増えるよう、あえて会社都合退職として離職票の交付を行うケースがありますが、これは、退職者が不正に失業給付を受給することになります。この場合、受給した本人はもとより、会社も不正受給をほう助した、または扇動したということで、ペナルティーを受けることがあります。

3. 最後に

退職した社員との退職理由をめぐるトラブルや思わぬ違法行為を防止するためにも離職票の離職理由は、事実に基づいた内容を記載するよう十分注意してください。