外国人雇用(その3 外国人を雇用するとき流れの基礎知識)
2019.07外国人雇用の最終回は、「技能実習」と「特定技能」の2つの在留資格のポイント、違いについて解説します。
1.「技能実習」について
(1)「技能実習」の目的
「技能実習」の目的は、「国際協力の推進」として行われるもので、後進国、発展途上国から外国人を受け入れ、一定期間日本で就業・実習させることにより、技術や技能、経験を修得してもらい、母国に帰国した際に、その国の産業の発展に寄与できる人材となってもらうことです。
(2)「技能実習」の種類
「技能実習」には企業単独型と団体監理型があります。企業単独型は、国内企業が海外の子会社や取引先の従業員を受入れ実習するパターンで、団体監理型は、事業協同組合や商工会議所などの監理団体を通じて実習生を受入れるものです。また、実習のレベル、技能水準により、技能実習1号、2号、3号に分類されます。
(3)「技能実習生」の処遇、在留期間は?
給与等の処遇は、日本人と同等以上にする必要があります。在留可能期間は、最長で5年です。
(4)「団体監理型技能実習」の受入れはどのように行う?
技能実習生の受入れを希望する企業は、まず、実習生のあっせんを行っている監理団体に加入する必要があります。監理団体に求人の希望を伝えると、海外送り出し機関を通じて実習生のあっせんを受けます。監理団体の指導の下で技能実習計画を作成し、外国人技能実習気候で計画の認定を受けます。監理団体が実習生に対し講習を行った後、企業が実習生と雇用契約を締結し、監理団体の指導を受けながら実習を開始します。受入れに必要な在留資格申請等の手続きは、監理団体が行います。
(5)その他ポイント
技能実習生は、監理団体のあっせんにより雇用契約を結びますので、基本的に転職はできません。技能実習2号、3号を修了した実習生は、「特定技能1号」に移行(在留資格を変更)することができます。
2.「特定技能」について
(1)「特定技能」の目的
「技能実習」の目的は、「国際協力の推進」として行われるもので、後進国、発展途上国から外国人を受け入れ、一定期間日本で就業・実習させることにより、技術や技能、経験を修得してもらい、母国に帰国した際に、その国の産業の発展に寄与できる人材となってもらうことです。
(2)「特定技能」の種類
- 「特定技能1号」
- 相当程度の知識、経験を必要とする技術を要する業務に就労する活動で転職可能。在留期間は、通算で上限5年 家族の帯同不可です。運用は2019年4月から順次開始。
- 「特定技能2号」
- 熟練した技能を要する業務に従事する活動で転職可能。在留期間は、上限なし。家族の帯同可。ただし、制度の運用は2021年から。
(3)「特定技能1号」の就業できる業務分野
「特定技能1号」が就業できる業務は、●介護●ビルクリーニング●板金、プレス加工、溶接等素材産業●産業機械製造業●機械加工、電子・電気機器組立●建設●造船業等●自動車整備●航空●宿泊●農業●漁業●飲食料品製造業●外食産業の14分野となります。
(4)「特定技能1号」該当要件は?
特定技能1号に該当する外国人は、次のいずれかの要件をクリアした人となります。
- 技能水準と日本語能力水準試験に合格した外国人
この試験は、(3)の就業分野ごとに順次行われていきます。 - 技能実習2号を良好に終了した外国人
技能実習2号から特定技能1号への切替に要する期間については、「特定活動」による在留資格がする特例措置がとられます。 - 一部農業や漁業などを除き、派遣労働者となれない。
(5)「特定技能1号」の外国人を受け入れるために
特定技能1号の外国人労働者を受け入れるためには、外国人を直接採用し、直接、雇用契約を締結します。「技能実習」のように監理団体や送出機関は介在しません。そのため,新たに特定技能1号の在留資格を取得する外国人や、技能実習から在留資格を変更する必要がある外国人を探し、在留資格申請や在留資格変更申請等の入管手続きを受入れ企業が行う必要があります。また、外国人の研付与修や生活するための各種補助も受け入れ企業が行う必要があります。
(6)「特定技能1号」受入れ企業に求められる事項は?
「特定技能1号」による外国人労働者を受入れるにあたり、受け入れ企業には、次の注意点、義務が生じます。
- 外国人を直接雇用すること
- ハローワークへの雇用の届出
- 外国人が入国する前に日本での生活ガイダンスを提供すること
- 給与等の処遇は、日本人と同等以上とすること
- 入国・帰国の際の空港までの送り向かい
- 日本にての保証人となること
- 改正入管法に定められた「支援計画」を作成すること
- 「支援計画」に基づき住宅の確保や各種行政手続きの支援を行うこと
- 日本語習得の支援を行うこと
- 労働・社会保険諸法令を遵守すること
- ハラスメントの防止措置を講ずること
- 外国人からの相談・苦情の受付窓口を設置し、その対応を行うこと
- 会社都合で退職する場合に「特定技能1号」の活動継続ができるよう支援すること
(7)受入れ企業への監督は?
受入れ企業に対しては、入局管理局はもとより、労働基準監督署、年金事務所等、行政による監督が入ります。特に労働基準監督署の調査では、今まで行われなかった外国人雇用の状況、外国人の労働条件、長時間労働について個別のチェックがされるようになりました。いままで「技能実習」に対して、行われていた最低賃金をはるかに下回ると賃金設定や残業代の未払い、長時間労働については、改正入管法成立時にも国会で大変問題となりましたので、「特定技能1号」に対しては、行政からの監督も厳しく行われるものと考えます。
(8)まとめ
以上、「技能実習」及び「特定技能」の概略について解説しました。今後は、建設や介護、飲食などの業界では「特定技能1号」を活用し、人材の確保がしやすくなると思います。ただし、従来のような「安い人手」、「使い捨てができる人手」といった感覚で外国雇用を考えると、特定技能は、転職も可能ですし、彼らは日本で働くにあたって驚くほどのネットワークを持っています。ブラック労務管理では外国人も寄り付かない企業にもなりかねません。