社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

来年4月より専門業務型裁量労働制には、本人の同意が必要です

2023.6

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務(※1)について会社と労働者の間であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

1日のみなし時間を9時間と協定した場合

実際に労働した時間が1時間→9時間勤務したものとする

実際に労働した時間が12時間→9時間勤務したものとする

(※1)厚生労働省令及び厚生労働省告示によって定められた業務で情報システムの分析又は設計、放送番組のプロデューサー、ゲーム用ソフトウェアの創作、公認会計士など現在では、19種類の業務があります。今後、「銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務」の追加が予定されています。

昨今、この専門業務型裁量労働制の運用が正しく運用されず、過大な業務を行い事実上の長時間労働を強いられ、協定時間を超えた長時間残業またサービス残業の温床として問題となっていました。

2024年4月からは、専門業務型裁量労働制を導入する全ての企業で、本人の同意を得ることが必須となります。継続導入する事業場では2024年3月末までに労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要があります。今後、協定届・決議届の新様式が公開されます。(なお専門業務型裁量労働制には労使委員会の設置までは求められていません。)

また、社員の健康・福祉確保措置が強化されます。(下線が今回の制度改正により追加された項目です)

事業所が対象労働者全員に対する措置

(イ)勤務間インターバルの確保(ロ)深夜労働の回数制限(ハ)労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)(ニ)年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めたその取得促進

個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置

(ホ)一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導(ヘ)代償休日又は特別な休暇の付与(ト)健康診断の実施(チ)心とからだの健康問題についての相談窓口設置(リ)適切な部署への配置転換(ヌ)産業医等の助言・指導又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

・(イ)から(二)までの措置、(ホ)から(ヌ)までの措置をそれぞれ1つずつ以上実施することが望ましいとされています。特に把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、裁量労働制の対象外にすることも検討するように求められています。

今後は、労働者本人が、専門業務型裁量労働制を正しく理解・納得し、同意を得ることで初めて制度の対象者として適用できるようになります。現在の社内で運用されている(1)みなし時間(2)対象者(3)業務内容(4)健康確保措置が適正であるかを確認し、今後の制度のあり方を検討する必要がありそうです。
当然のことではありますが、会社の専門業務型裁量労働制に同意しない従業員に不利益な取扱をしてはいけません。給与計算においても、同一の業務で一律に専門業務型裁量労働制対象者として計算されていたと思いますが、同意の有無により従業員ごとに残業の計算の有無が変わりますので、注意が必要です。補足ですが専門業務型裁量労働制であっても深夜業務に従事した場合は、深夜勤務(夜10時から翌朝5時まで)は0.25%の割増賃金は必要となります。新様式が公開されましたら順次ご案内いたします。ご不明な点がございましたら、是非お問い合わせください。