フレックスタイム制で良くある相談
2023.5ここ数年、働き方改革、新型コロナ対策、人材確保困難など様々な理由でフレックスタイム制の導入が進みました。今回は、それに伴う良くある質問、相談を紹介します。
1.フルフレックスタイム制やスーパーフレックスタイム制の導入に関する質問、相談
(1) フルフレックスタイム、スーパーフレックスとは?
フレックスタイム制とは、本来、所定労働日の勤務について、始業、終業時刻、休憩時間の決定を社員に委ねる制度で、必ず勤務しなければならない時間帯(コアタイム)を設けることが多いのですが、これに対しフレキシブルタイム内であれば勤務する時間や時間帯に制限を設けない、または勤務する日や日数までも社員の決定に委ねるフレックスタイム制を「フルフレックスタイム制」または「スーパーフレックスタイム制」などと呼びます。ともに法律用語ではなく、明確な定義がないため企業によって呼び方もまちまちです。
(2) フル(スーパー)フレックスタイム制での相談(出勤フリー)
フレックスタイム制は、清算期間内の各日の労働時間については、管理を行わず、清算期間における総労働時間のみを管理の対象にするため、所定労働日数勤務しなくても総労働時間が月の所定労働時間に達すれば給与額が減額されることはありません。従って休日の振替が社員の自由意志で行われ、また勤務日や勤務日数を自由に決めてしまう社員が少なからず出てきます。月の半分も出勤しない社員がいて会社の秩序が乱れているなどの相談が増えています。
(3) フル(スーパー)フレックスタイムでの相談(深夜勤務の増加)
フル(スーパー)フレックス制を導入する際に、労使協定にフレキシブルタイムを設けていない、または設けているが社員に周知徹底できていないことで社員の勤務時間が深夜時間帯(22:00~翌朝5:00)に集中し、深夜勤務の割増賃金コストが大幅に増加したという相談も多く寄せられています。
(4) 対応方法
- フル(スーパー)フレックスタイム制においても、相当の理由がない限り、休日の振替や出勤日の決定までを社員の決定には委ねない。
- 出勤日の決定を社員に委ねるとしても、出勤日数は所定労働日数を厳守させ、不足の場合は無断欠勤として厳格に扱い、場合によってはペナルティーを与える。
- 出勤日の事前届出、休日の振替事前申請・承認などの手続き運用を徹底する。
- 深夜時間帯を避けフレキシブルタイムを設定し、説明周知を徹底する。
- フレキシブルタイムの有無にかかわらず、深夜勤務は申請承認を必要とする運用を徹底する。
※)上記いずれの対応も、制度開始後に規制を加える場合は、労働条件の不利益変更に該当する可能性が高いため、様々なことを想定し制度をスタートさせることが重要です。
2.外勤者・出張者へのフレックスタイム制の適用に関する相談
フレックスタイム制を適用したいが、始業・終業時刻や休憩時間の把握が困難な外勤や出張がある社員について、どのように対応したらよいかという相談をよく受けます。たまにある外勤や出張であれば、通常、その日については1日の所定労働時間勤務したものとみなします。フレックスタイム制においても、労使協定に定めた1日の標準となる時間を勤務したものとし、月の総労働時間数に算入します。ただし、営業職など清算期間のほとんどが外勤や出張で移動時間や待機時間が多い社員などは、フレックスタイム制にそぐわない場合もあるため適用にあたっては十分検討すべきでしょう。