社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

2023年10月からの地域別最低賃金(引き上げへの対応)

2023.9

2023年度の地域型最低賃金額について、中央最低賃金審議会から答申された目安をもとに各地方最低賃金審議会から答申がありました。物価高騰などもあり、予想以上の引き上げとなりそうです。答申された額は、都道府県労働局にて異議申出に関する手続きを経た上で、都道府県労働局長の決定により10月1日から発効します。今回は地域別最低賃金の改定情報と引き上げへの対応について触れます。

1.2023年10月の最低賃金は、過去最大の引き上げに

最低賃金の全国加重平均額は、1004円となり始めて1000円を超えました。中央最低賃金審議会が示した目安より2円高くなっています。
対前年の値上げ額は、全国加重平均で43円と過去最大になります。
答申通り引き上げられると、東京都は、41円UPで1113円となります。その他主な都道府県の最低賃金予定額は次の通りです。

2.主な都道府県の2023年10月からの最低賃金予定額

都道府県 最低賃金予定額(UP額) 都道府県 最低賃金予定額(UP額)
東京都 1113円(41円↑) 大阪府 1064円(41円↑)
神奈川県 1112円(41円↑) 愛知県 1027円(41円↑)
埼玉県 1028円(41円↑) 北海道 960円(40円↑)
千葉県 1026円(42円↑) 沖縄県 896円(43円↑)
茨城県 953円(42円↑) 宮城県 923円(40円↑)
栃木県 954円(41円↑) 兵庫県 1001円(41円↑)
群馬県 935円(40円↑) 福岡県 941円(41円↑)

3.最低賃金引き上げへの対応

2023年10月からの最低賃金引き上げに、企業としては早めに対応を検討する必要があります。
パートタイマー等の最低時給額はもとより、正社員等の月給者についても初任給等が時間換算で最低賃金を割りこまないように見直しが必要です。
今回は最低賃金の引上げ幅が大きいため、単純に時給者や月給者の初任給だけを最低賃金以上に引き上げれば、それに伴い他の既存社員との給与バランスも崩れてきます。社内におけるベース給与のテーブル全体を最低賃金への対応により見直す必要が出てくる可能性があります。今年の4月に各企業で積極的に行われた全体的なベースアップを10月にも行う必要があるかもしれません。

4.給与テーブル見直しにあたり

給与テーブルの見直しにあたり、初任給等の入口の給与を引き上げることに伴い、全体的に給与テーブルの給与カーブを上方に引上げると、当然ですが、人件費が大幅にアップしてしまいますので、入口で引き上げた分、中堅社員からシニア社員の給与カーブの上昇を抑え、またはカーブの下降を早めるなどして全体的な人件費上昇を抑えることが求められます。
また、固定残業代やみなし残業代制をとっている場合、最低賃金の引上げにともない基本給などのベース給与の上昇に伴い固定残業代、みなし残業代もアップしますので、給与額の設定には注意が必要です。