労働法の基本講座第4回「賃金」その2
2013.07今回は、賃金について、労働法および労務管理の実務的な視点から解説します。
1. 賃金体系、賃金の種類と構成
賃金体系とは、賃金がどのような構成内容で成りたっているかを表すものです。賃金体系は、(1)基準内給与 (2)基準外給与 (3)その他の給与に大別されます。
(1)基準内賃金(所定内賃金)
所定の労働時間の労働に対し支払われる賃金または、その労働者の属人的な能力や経験、資格、年齢などに対し、」毎月決まって固定的に支払われる賃金、給与、手当が該当します。(基本給、役職手当、業務手当・年齢給、勤続給、能力給、資格手当、歩合給など)
基準内賃金は、時間外勤務や深夜勤務などに対する割増賃金計算の算定基礎となる賃金となります。
(2)基準外賃金(所定外賃金)
時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当などの所定労働時間外の割増賃金が該当し、毎月変動する賃金です。
(3)その他の賃金
実費弁済的に支払われる賃金、生活補助的に支払われる賃金、報奨的に支払われる賃金、臨時調整的に支払われる賃金などがこれに該当します(通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当、賞与、1か月を超える期間ごとに支払われる報奨金、調整手当など)。
その他の賃金は割増賃金の計算の基礎から除外できる賃金です。
2. 割増賃金の算定基礎となる賃金
前述1のとおり、割増賃金の算定基礎となる賃金は、(1)の基準内賃金です。歩合給については、出来高により毎月変動する賃金ではありますが、法廷の除外賃金には含まれませんので算定基礎に入れなければなりませんから注意してください。(2)の基準外賃金や(3)のその他の給与は算定の基礎とはなりません。
ただし、名称が通勤手当や家族手当、住宅手当などであっても、全労働者に一律に支給されていたり、実際の通勤費用や家族構成、住宅費用などに連動していないものは、労働基準法上、算定基礎から除外できる賃金とはみなされません。
基準内賃金の一部を名称だけ変えたものとみなされますので注意が必要です。
3. 歩合給における時間外割増賃金の計算方法
2で述べたとおり、歩合給など出来高に応じて支払われる賃金についても時間外割増賃金の算定基礎に入れる必要があります。歩合給などにおける割増賃金の計算は次の方法により行います。
歩合給100,000円 月総労働時間200時間 残業時間32時間の場合
100,000円÷200時間×0.25×32時間=4,000円を通常の割増賃金にプラスして支払います。
4. 賃金と就業規則、賃金規程
これまで賃金支払いの5原則や賃金体系について説明してきました。賃金については、法令で定められた事項のほか、その企業ごとに様々な決め事がなされています。
たとえば、各手当の支給要件や支給額、欠勤した際の欠勤控除の仕方、入社月、退職月の日割り計算の方法、月の途中で転居や家族の異動があった時の通勤手当、住宅手当、家族手当の支給方法、昇給や賃金改定についてなどなど。
これら賃金の決め事は労使間権の根幹をなす労働条件です。会社としては、きちんとした裏付けのもとにこれらの運用をする必要があります。そのためにもこれらの決め事を就業規則や賃金規程で明確に定めておくことは必須です。