労働法の基本講座第6回「年次有給休暇」その2
2013.09今回も前回に引き続き、年次有給休暇について、労働法および労務管理の実務的な視点から解説します。
1. 年次有給休暇の有効期限は?
年次有給休暇(以後、「有休」といいます)の有効期限は、付与日から2年間です。
付与されたが消化しきれなかった有休は、翌年度に限り繰り越せます。
社員が有休を消化する際に、前年度分の有休が繰り越され残っているときは、前年度の古いものから消化されることになります。
2. 有休の取得時季を変更させることは可能か?
労働基準法第39条第5項では、有休の取得時季について二つの権利を定めています。
一つは、前号でも触れましたが、社員側が自由に取得時季を指定できる時季指定権です。
これに対し、社員から申請のあった有休の取得時季が、業務繁忙時季にあたるなど会社の事業運営に重大な支障が出る場合、会社が他の時季に取得するよう指示できる権利が時季変更権です。
会社が時季変更権を安易に使うことは、有休取得を抑制することにつながりかねません。
余程の理由がない限り、権利の濫用にならないよう注意が必要です。
3. 有休の取得時季を予め定めることは可能か?
社員が有する有休残日数のうち、5日間分までについて会社が取得時季を特定することにより、年間を通して有休の取得を促進することを有休の計画付与といいます。
計画付与の例として次のようなものがあります。
例1 GWが飛び石連休となるため、休日と休日の間の勤務日に有休を取得させ、長期休暇を実現する
例2 会社指定の夏季休暇のほかに、夏季に有休を計画的に取得させることで長期休暇を実現する。
有休の計画付与は、社員側の時季指定権と会社側の時季変更権を消滅させる効力を有しますので、運用にあたっては、必ず労使協定を締結し、計画的に取得させる日数や時期を定める必要があります。
4. 有休の取得単位は1日単位?
有休は、あくまでも休暇ですので、日単位で付与取得することが原則です。
ただし、就業規則等の定めることにより半日単位で付与取得させることも可能です。
また、平成22年労働基準法改正では、労使協定を締結することにより有休のうちの5日間分までを時間単位で有休を取得することが可能になりました。
半日単位で取得を認める場合の注意点
半日単位で有休を取得させる場合、就業規則に明確に半日の単位を定めます。
1日の所定労働時間が8時間の場合、半日有休は4時間単位としなければならないのか、それとも会社の業務や休憩の都合で午前有休を3時間、午後有休を5時間とできるのか?「半日」とは言え、会社の業務の都合上、1日の所定労働時間の完全に1/2とせずとも、明確に就業規則にその単位が定められていれば、法令違反となりません。
午前有休取得日の出社時間、午後有休取得時の退社時間を明確にし、また午前取得と午後取得で同じ半日有休でも不公平感が出る場合は、就業規則における根拠を踏まえて社員に十分説明することも必要です。
時間単位で取得を認める場合の注意点
時間単位で有休取得を認める場合は、
(1)時間単位で取得可能な社員の範囲 (2)時間単位の付与が可能な日数(3)1日分の時間数 (4)1時間以外での取得を認める場合のその時間数
を労使協定で定めなくてはなりません。また運用上の有休残日数等の管理が非常煩雑になることにも留意しなければなりません。
5. 有休の買い取りについて
消化しきれず、時効消滅する有休の買い取りは法令違反です。唯一例外として認められるのは、退職にあたり、消化しきれなかった有休を会社が恩恵的に金銭に換算して支払う場合です。
本来は、消滅してしまう有休を恩恵的に買い取るわけですので、その1日あたりの単価は、会社が任意に決定できます。