2016年の社会保険適用促進策動向
2016.01今回は、2016年の構成労働省の社会保険適用促進強化策のいくつかをご紹介します。
1. 社会保険に未適用の事業所(企業)への適用督促の強化
法人格である株式会社等は、社会保険は強制適用となっていますが、中小零細企業では、まだまだ未適用の企業が多いのも事実です。こうした状況に対し、国はこの数年で強制的な適用促進を進めています。日本年金機構から適用の督促を書面で受ける企業が急増しています。
また、厚生労働省は、他の省庁や各自治体と連携し次のような社会保険の適用促進を進めています。
- 国交省と連携し、建設業や運輸業の許認可取得・更新の要件として社会保険適用を厳格化しおり、 日本年金機構からだけではなく、国交省からも社会保険加入の督促状が送られてくる
- 都や区が、指定管理事業者等、自治体から業務の委託を受ける事業者に対し、社会保険加入や労働条件の審査を受託の要件としている
これらの督促に応じ自ら社会保険に加入する場合は、過去の未加入についてお咎めはなく、将来に向かって社会保険に加入すれば事足りますが、これらの督促を無視し、放置しておくと強制的に2年間遡っての加入を命ぜられるなど、懲罰的な措置が取られることになりますので放置しないように注意する必要があります。
2. 二事業所に勤務する役員、サラリーマン・OLの両事業所での社会保険適用の厳格化
- A社を経営しながら子会社B社の経営者でもあるC社長
- D社の社員であって、E社の非常勤役員を務めるFさん
これらのケースで今までは、いずれかの会社での業務実態や勤務実態が非常勤であることを理由に、主たる業務先、勤務先の会社のみで社会保険に適用(加入)すればよかったのですが、最近では、業務実態や勤務実態に拘わらず、報酬が多少でも支払われている場合は、両社での加入指導を強化しています。 - G社とH社にともに契約社員として勤務するIさん
サラリーマン・OLが兼業するケースも最近増えてきていますが、双方から給与が支払われ、加入要件である正規社員の労働時間の概ね3/4勤務している場合は、両社で社会保険に加入するように厳しく指導されるようになりました。
3.平成28年10月1日からパートタイマー(短時間労働者)の社会保険適用拡大
今までは、パートタイマーなどの短時間労働者で、労働時間がその企業の正規社員の概ね3/4未満であれば、収入の多少にかかわらず社会保険の適用から除外されていましたが、平成28年10月1日より社会保険適用要件が次の全てに該当するパートタイマーに拡大されます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 年収が106万円以上
- 月収が88,000円以上
- 雇用期間が1年以上
- 従業員数501人以上の企業の従業員(H31.9.30までの時限措置)
これにより、全国で約25万人のパートタイマーが社会保険の適用を受けることになります。
月収88,000円の東京勤務の方で健康保険4,400円、厚生年金8,400円の保険料負担が生じます。