社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

労働(雇用)契約書の重要性と注意点

2016.10

働き方が多様化し、様々な雇用形態・勤務形態が増えてきている中で、会社と従業員の間でのトラブルが、非常に多くなっています。今までのように従業員に包括的に適用する就業規則だけでは、このような多様化する労働条件のトラブルを防ぐことは難しくなっています。雇用形態や従業員の区分ごとに適用される就業規則を作成することや入社時や労働条件が変更された時は、その内容を従業員と会社の双方で労働契約書などの書面にて確認する重要性が一層重要となっています。今月は、中でも労働契約書の重要性や有期労働契約の注意点について確認していきたいと思います。

1.労働契約書はなぜ必要?

「求人広告、募集要項と契約内容が異なっている」「実際に勤務を始めたら採用時に聞いていた条件と違っていた」「入ってみたら残業代は基本給に込みこみと言われた」など従業員から苦情が出たり、ハローワークに相談に行かれたり、はたまた最悪は求人サイトの口コミ蘭やその他SNSなどに「ブラック企業だ!」「こんな会社には入らない方が良い!」などと書き込みをされるなどトラブルは様々です。また、契約社員については正社員と賞与や特別休暇などの労働条件が異なるにも拘わらず、労働契約書による条件提示を面倒と怠り、就業規則や給与規程の内容通りとの説明をしたため、入社後に契約社員が「労働条件が違う」と労働基準監督署に駆け込むケースなども多数見受けられます。ちょっとした手間を省いたことから契約社員に対し、正社員と同じ労働条件を適用しなければならなくなります。このようなリスクを防ぐためにも、必ず労働契約書を締結や労働条件通知書などによる労働条件の明示・確認が必要です。

2.労働契約書の締結タイミング

採用を決めて勤務の初日または勤務を開始してから労働契約書を取り交わすケースがありますがNGです。この段階で会社と従業員の間で労働条件の認識に齟齬が出ることがあるからです。こうなると「話が違う」ということになってしまいます。場合によっては従業員から「そんな条件なら入社しなかった」「ほかの会社を受けるので、その間の機会損失の賠償をしてほしい」などという話になることもあります。採用後ではなく、必ず採用決定し雇入れる前に労働契約の内容を書面で明示、確認する必要があります。

3.労働条件の明示

労働条件の明示については、その内容と方法が労基法で定められており、たとえパートタイマーや臨時のアルバイトであっても当然に労働条件の明示は必要です。

法定の明示事項 ※(1)~(6)及び(16)は必ず書面にて明示しなければなりません。

(1)労働契約の期間(雇用期間の定めの有無、ある場合はその期間) (2)労働契約期間の定めがある場合の更新の有無、更新の基準 (3)就業の場所、従事する業務の内容 (4)始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項  (5)賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項 (6)退職に関する事項(解雇の事由を含む) (7)昇給に関する事項 (8)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項  (9)臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項 (10)労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項 (11)安全・衛生に関する事項 (12)職業訓練に関する事項 (13)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項 (14)表彰、制裁に関する事項 (15)休職に関する事項※短時間労働者(パートタイマー)の場合は、(16)労務管理に関する相談窓口の明示も必要となります。

上記の事項を示すことで会社のルールを確認し、トラブルを未然に防ぐことができます。
次回は有期労働契約と、その労働契約書作成のポイントを解説します。