2017年の人事・労務管理を巡る動向とポイント
2017.022017年は、昨年発足しました「働き方改革」、「1億総活躍国民会議」により国民の働き方と少子高齢社会に対する構造的な改革の年となり、各企業もこれらの改革の対応に迫られます。電通の長時間労働・パワハラ事件の影響や社会保障改革等もあり、今回は今年の人事・労務管理の主なポイントを解説します。
1.働き方改革への対応
協会けんぽの健康保険料率は、都道府県によって異なりますのでご注意ください。
(1)同一労働同一賃金に基づく非正規社員の処遇改善
非正規社員の処遇改善のため、非正規社員であっても正規社員と同一または同等の職務内容であれば同一の賃金を支払うことが原則となり、不合理な不利益な扱いを禁止するためガイドラインの明示、労働契約法をはじめとする法改正の諮問が行われる見込みです。
(2)長時間労働の是正とその監督強化
過重労働防止はもとより、育児、介護と仕事の両立支援や女性のキャリア形成の観点から法規制の強化され、行政の調査、監督が強化される見込みです。また、現行の36協定の在り方について見直しが検討され、特別条項による実質、無制限な残業時間の延長は見直される可能性があります。
(3)賃金の引上げ
政府が主導する大手企業の春闘における賃上げはもとより、非正規社員の処遇改善の観点から10月に最低賃金が3%程度をめどに引き上げられる見込みで、1,000円を目指すことが確認されています。
(4)次世代支援、育児・介護と仕事の両立支援、女性活用のための働き方見直しの一層の推進
平成29年1月1日より改正育児・介護休業法が改正施行され、育児休業、介護休業の対象となる子や家族の範囲が拡大されたのをはじめ、特に介護休業について大きな見直しが行われました。今年も両立支援や女性活用推進のための助成金活用ができそうです。テレワークや副業・兼業などの法整備が検討されています。
(5)高齢者の就労促進
平成29年1月1日から新たに雇用する65歳以上の者が雇用保険の適用対象となります。保険料は、平成31年度分までは、年度の初日に64歳以上の者は免除されます。
(6)外国人労働力の拡大
在留資格に「介護」を新設する入管法の改正が行われ、技能実習に「介護」を追加し、実習期間を3年から5年に延長する外国人技能実習適性実施法が成立しました。
2.社会保障制度への対応
(1)社会保険未適用企業の適用促進
未適用事業所への適用の督促、指導がより一層強化され、遡及適用を命ぜられるケースも増えそうです。
(2)パート・アルバイト社員への社会保険適用の厳格化
パート等の未加入者について年金事務所による総合調査は今後、増えていきます。また算定基礎届提出時の算定基礎調査は、今後も継続実施され4年に1度は全企業が調査を受けることになります。
(3)二事業所勤務者の適用の厳格化
2か所以上兼業社員や経営者の各事業所での社会保険への加入が厳格化しており、そのための調査が今後も増える見込みです。
(4)働く意欲向上のため女性パート等、兼業者の社会保険加入要件や配偶者控除の上限収入見直し検討
女性パート等の働く意欲向上のため、複数の兼業をする者の社会保険加入の要件の労働時間を合算できるよう検討し、税制上の配偶者控除の収入上限が103万円から150万円に引き上げられる見込みです。