社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
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社会保険の適用拡大

2017.05

最近、年金事務所による社会保険の総合調査が増えています。社会保険へのパートタイマー等の適用拡大にともない年金事務所の調査・指導が強化されており、その内容も厳しいものになってきております。今回は、社会保険の適用拡大と調査について解説します。

社会保険の適用拡大とは

昨年の10月1日より厚生年金の被保険者数が501人以上の企業(「特定適用事業所」という)について、つぎの(1)~(4)の全てに該当する者も社会保険の加入対象になりました。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が88,000円以上であること
  4. 学生でないこと

平成29年4月の法改正による適用拡大の内容

厚生年金の被保険者数500人以下の企業については、今まで通り1日または1週の所定労働時間、月の所定労働日数が正規社員の3/4未満のパートタイマーについては、社会保険の適用から除外されますが、今年の4月の法改正で、500人以下の企業においても、従業員の1/2以上と事業主の労使合意があり申し出をすれば、501人以上の企業同様、前述の(1)~(4)の全てに該当するパートタイマーが社会保険に加入することが可能です。

年金事務所による総合調査の実態

1.調査の内容、何を調べるか

昨年から年金事務所による総合調査が増えています。この総合調査は、以前から行われており、任意抽出した企業において、つぎの(1)~(4)内容を直近の2年間について調べるものでしたが、最近の調査は(1)に絞った形で行われ、以前に比べかなり厳しくなっております。理由としては、消費税率10%へのUP据え置きや加入期間10年での年金受給要件の緩和に伴う年金原資の確保などが考えられます。

  1. パートタイマー等で上記の適用拡大に伴い、社会保険に適用すべき従業員を適用しているか。
    (タイムカード、勤務表による毎月労働時間のチェック、賃金額がどれだけ少なくても関係なし)
  2. 算定基礎届けによる4月、5月、6月の賃金の申告が適正か。
  3. 固定的賃金の変動による月額変更を適正に行い、保険料に反映させているか。(賃金台帳のチェック)
  4. その他法令で定められた手続きを適正に行っているか。

2.指導の内容は

上記の調査により違反が見つかった場合、是正の指導、勧告が行われます。最近の調査では、今まで実際に行われてはこなかった遡及しての是正指示が出されることです。3カ月程度の遡及であればまだしも、きっちり最長2年の遡りを命じてきます。「社会保険に加入させるとパートタイマーが辞めてしまう」、「指摘されたパートタイマーは今月いっぱいで辞める予定である」、「パートタイマー自身が保険料を負担できない」、「遡及適用すると保険料の負担ができない」、「会社の法令違反が原因なので会社が負担すればよい」、「雇用契約上は、適用除外となる労働時間なのだが、本人が勝手に労働時間を増やしてしまっている」などの理由は通用しなくなっております。未適用のパートタイマーがいる企業は、調査に入られる前に将来に向かって自主的な是正が求められます。