同一労働同一賃金のガイドライン案
2017.08今月は、働き方改革実現会議から公表された「同一労働同一賃金のガイドライン案」について概要と準備しておきたいことについて考えていきたいと思います。
同一労働同一賃金とは
職務内容が同一または同等の労働者に対し、同一の賃金を支払うべきという考え方です。現在日本の全雇用者の4割が、非正規雇用労働者であり、正規雇用労働者との間で、賃金や福利厚生、教育において不合理な待遇差が問題となっています。「同一労働同一賃金」はこの待遇差の解消を通じて、誰もが会社での役割を明確に自覚し、意欲をもって働き、適性に評価され、納得した賃金や待遇を受けることを目指しています。
ガイドライン案について
昨年12月に「同一労働同一賃金のガイドライン案」が公表されました。注意しなければならないことは、全ての格差を解消して完全な均等待遇を目指しているわけではありません。例えば、責任の度合いや定期的な勤務地変更がある雇用契約や変更がない雇用契約など雇用条件が異なる場合については、不合理な待遇差とはなりません。また、正規雇用労働者と非正規雇用労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして合理的なものでなければなりません。このガイドライン案には、正規雇用と非正規雇用との間で待遇差が存在する場合に問題となる例・問題とならない例が具体的に示されています。
基本給を労働者の職業経験・能力に応じて支給する場合、正規労働者と同一の職務経験・能力を蓄積している非正規社員には、職業経験・能力に応じた部分につき、同一の賃金を支給しなければならない。
- 問題とならない例
- 職業能力向上の特殊なキャリアコースを設定している会社で、正規雇用労働者Aはこのキャリアコースを選択し、その結果としてその職業能力を習得した。これに対し、非正規労働者Bはその職業能力を習得していない。会社はその職業能力に応じた支給をAには行い、Bには行っていない。
- 問題となる例
- 正規社員が非正規社員に比べて多くの職業経験を有することを理由として、非正規社員よりも多く基本給を支給しているが、正規社員の職業経験は現在の職務に関連性を持たない。
賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合、正規社員と同一の貢献である非正規社員には、同一の支給をしなければならない。また貢献に一定の違いがある場合いおいては、その相違に応じた支給をしなければならない。
- 問題となる例
- 賞与について、正規社員については、職務内容や貢献等にかかわらず、全員に支給しているが、非正規社員については支給していない。
これから準備しておきたいこと
上記のガイドラインは、まだ確定ではありませんが、2019年4月を目標にパートタイム労働法、労働契約法、派遣法の改正が予定されています。まずは、現在の社員間の待遇差の状況把握をすることが肝心です。今後会社は労働者に対し、待遇差の説明が義務化される方向です。
今後の法改正を前に、次のポイントを説明できるよう、準備をしておくことをお勧めします。
- 会社が職業経験や能力を図る基準をあらかじめ設定し、社員が果たす役割を明確にしておく。
- 正規社員と非正規社員との違いを明確にし、雇用契約書や就業規則にできる限り詳しく明記する。
別ルールが適用される場合は、パートタイム就業規則に別立てにする。 - 手当や賞与の支給基準を明確する。