社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

時間外労働の上限規制等について

2017.09

政府が進める「働き方改革実行計画」(H29.3.28)により、時間外労働の上限規制について検討されていますが、詳細は、まだ確定しておらず断定的なことは言えません。今回は、現在出ている情報を基に時間外労働の限度時間の上限規制について、今後の見通しを解説します。

(1)現行の残業の限度時間は?

現行の法定労働時間は1日8時間、1週40時間で、法定労働時間を超えて労働させるためには、36協定を締結し労働基準監督署に届け出る必要があり、また、36協定を締結したからと言って無制限に時間外労働させることはできず、以下のような期間区分で限度時間の基準が定められています。この基準は法令ではなく厚労省の「告示」により定められているもので法的拘束力や違反した際の罰則がありませんでした。

1週間・・・ 15時間(14時間) 2週間・・・ 27時間(25時間) 4週間・・・ 43時間(40時間)
1カ月・・・ 45時間(42時間) 2カ月・・・ 81時間(75時間) 3ヶ月・・・ 120時間(110時間)
1年・・・ 360時間(320時間) ※()内は1か月単位の変形労働時間制適用の場合の限度時間
※これらの限度時間には、法定休日労働の時間は含みません。

(2)今後の残業の限度時間はどうなるか?

では、今後の時間外労働の限度時間はどのようになるのでしょうか。7月12日に労働政策審議会労働条件分化会での「時間外労働の上限規制等について」の報告では、(1)の現行の限度時間が次のように1ヶ月と1年の2つの期間区分にまとめられ、法制化され法的拘束力を持つことになりそうです。

1ヶ月・・・ 45時間(42時間) 1年・・・ 360時間(320時間)
※現行同様、これらの限度時間には、法定休日労働の時間は含みません。

(3)時間外労働の限度時間の特例はあるのか?

時間外労働の限度時間は(2)のとおり法制化されますが、現行での特別条項付き36協定と同様に、臨時的な特別の事情がある場合で、労使が合意し労使協定を結んだ場合は、(2)の限度時間を超えて時間外労働をさせることができます。

(4)時間外労働の限度時間を超えて残業させることができる回数と時間は?

特例として限度時間を超えて時間外労働させられる回数と時間はつぎのようになる見込みです。

  1. 回数は、年6回まであること
  2. 年間の上限時間は、720時間(法定休日の労働時間は含まない)までであること
  3. 法定休日労働を含み、2カ月ないし6カ月の平均で80時間以内であること
  4. 法定休日労働を含み、単月での時間外労働上限は100時間未満であること

(5)限度時間の特例の注意点は?

(4)のBで年間の上限が720時間で、1月あたり60時間ということになりますが、Aの回数制限により毎月60時間が上限とはなりません。また、Dの単月の上限時間は100時間未満ですが、A、B、Cにより例えば毎月90時間まで限度時間を超えて残業させるなどはできないことになります。

(6)法定休日労働の時間はどのように扱うか?

法制化される残業の限度時間(月45時間)及び限度時間を超えて残業させることができる年間上限時間(720時間)には法定休日労働は含みませんが、(4)のC及びDには法定休日労働の時間も含むことになり、基準ごとに法定休日労働の取扱いが変わる見込みですので、運用上の注意が必要です。

以上は、現在の情報をもとにした内容です。秋の国会の動向に注目する必要があります。