社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

人材の確保・定着への施策

2017.11

「アベノミクス景気」が「いざなぎ景気」を抜いて戦後2番目に長い好景気となる中、企業の採用意欲は旺盛で各企業とも人材の確保に頭を悩ませています。今回は、人材の確保・定着のため増えている企業の事・労務管理上様々な施策をご紹介します。

【事例1】採用基準の見直し

社員の採用基準を見直し、「即戦力の実務経験者」から「未経験者」歓迎とし、採用後の適性の見極め教育育成に主眼を置いた採用に考え方を変えます。中小企業では「即戦力人材」を求めても処遇などの競争力で大手企業に太刀打ちできず、求人に対し思うような応募が得られない場合や高いコストをかけて即戦力となる経験者を採用しても、会社・社員ともに期待する結果が得られずミスマッチがおこり雇用定着に結びつかないケースが出てきます。即戦力をはなから求めず、ある程度時間をかけて育てる覚悟で採用しやすい未経験者を採るほうが結果的に会社にマッチすることもあります。また未経験者であるからこそ、まずは非正規社員として採用し、正社員登用制度を設け、適性を見極め優秀な人材を正社員登用していくことが可能になります。やり方によっては助成金も活用できます。

【事例2】地方における採用活動の導入、外国人の積極採用

東京においてはIT業界におけるエンジニア等、業種や職種によって一定の知識や経験を有する人材の確保は相当困難な状況です。そんな中、地方の高校、高専、専門学校、大学に対し積極的な新卒の採用活動を行う企業が増えてきています。入社後の受け入れ態勢として社宅や手当による住宅費用の補助制度を充実させる施策を打っています。中には地方でのテレワークを一部の社員に導入する企業も出てきています。また、外国人の雇用を実施する企業も増えています。外国人を雇用するために、まずは人事担当者に在留資格、在留期間、求人方法、労働条件の設定、ハローワークへの外国人情報の登録、社会保険加入など法律上の知識や手続きの研修に力を入れる企業が増えています。

【事例3】給与制度の見直し・福利厚生の拡充

人材確保・定着のため給与制度を見直す企業も増えています。具体的には成果や能力に比重を置いた給与体系から、勤続年数や年齢に応じた給与、手当を復活させる企業がこの数年で増えました。また、成果型で頑張りに見合った給与制度のほか、仕事だけではなく余暇充実や育児などワーク・ライフバランスを重視したゆとりある働き方を選択できる安値安定型の給与コースを社員が選択できる給与制度を導入する企業もあります。その他、退職金制度を新たに導入する企業も増え、改正された企業型確定拠出年金(新型401K)や中小企業退職金共済を利用した制度導入が主流となっています。福利厚生の拡充として子育て用途の特別休暇の導入や3年から5年単位での勤続に対し、リフレッシュ休暇や旅行資金の付与、資格取得支援のための休暇付与や資金援助制度などがあげられます。

【事例4】人事評価制度の見直し

社員が定着しない理由の一つに、人事評価に対する不公平感や会社の目指すところの発信不足、評価基準やの不明確さ、評価と処遇決定が連動されていないこと、成果・実績に寄りすぎた評価でプロセスや行動が評価されないなどがあげられます。これらの理由により仕事に対するモチベーションの低下、離職率の高さにつながっている企業が多いのではないでしょうか。会社の目指す方向を社員に明示し、その達成のために会社は今何をすべきなのか、それをするためにはどのような社員が必要で、その社員にどういった役割を果たしてもらう必要があるのかを社員に理解させ、その役割を果たせば評価され処遇がよくなることを示す、という考え方が最近の人事評価制度構築の主流となっています。