2018年以降の労務管理の注目点とそのポイント 第1回
2018.01今回から数回にわたり2018年以降の労務管理の注目点のポイントをコンパクトに解説します。
1.働き方改革・労働時間管理・過重労働防止
働き方改革の主命題として、労働時間管理、過重労働防止などが一層求められます。勤怠アプリやスマホの活用などにより、客観的な労働時間を把握するとともに運送業界をはじめとして行われている抜本的な業務のあり方の見直しやフレックスタイム制、テレワーク等の制度導入により残業時間を多くても月平均で60時間未満に抑えるが必要があります。また、人材確保の観点からも休日や休暇のあり方を見直し、年間の総労働時間を削減することも重要になります。
2.同一労働同一賃金
「パートタイム労働法」が「パート有期法」に改称されるなど、正規社員と非正規社員の不合理な待遇差別の禁止が2020年4月から予定されています。企業としては、正規社員と非正規社員の職務や責任についてよりきめの細かい職務・役割の等級設定、人材育成などの人事制度やそれに紐づく給与テーブルや手当等の賃金制度の在り方、その他休暇または退職金、福利厚生などの処遇を検討する必要があります。
3.有期雇用契約社員の無期雇用転換
2018年4月から始まる契約更新により勤続年数が5年を超えた有期雇用労働者が希望した場合の無期転換制度については、企業はあくまでも有期雇用を無期雇用に転換することだけでよく、職務内容や責任、処遇、人事制度等を正規社員と同じにしなければならないわけではありません。ただし、有期社員向けの就業規則を作成し、適用していた場合は、労働契約や契約期間の規定を見直す必要があります。また、無期転換社員について新たな雇用形態として労働条件の上乗せ等を検討するのであれば、無期雇用転換社員向けの就業規則の策定も必要となります。制度開始を前に改めて制度内容や無期転換のための社内手続きについて周知を行うかどうか、企業側としては悩ましいところですが、新たな雇用形態として運用するのであれば事前の説明が必要でしょう。
4.定年後の65歳までの再雇用、雇用継続
60歳定年の企業は、原則、定年に達した社員が退職や解雇の事由に該当しない限り、本人が希望すれば65歳(特別支給の老齢厚生年金支給開始年齢)まで雇用を継続しなければなりません。法令上は、雇用の場を継続して提供すればよく、労働条件は定年時のものを継承しなければならないわけではありません。会社が提示した労働条件に社員側が合意しない場合は、定年退職となります。ではどの程度の労働条件の設定までが許されるのか問題になるところです。これについては年金開始年齢までに無収入期間が生じることを防ぐという観点から、極端に勤務日数や勤務時間を減らし、給与を低く抑えることは制度の趣旨に反するものとなります。定年再雇用は、一般的に1年の有期雇用契約を更新する形で行われますので、更新の際に労働条件を見直すことが可能です。更新時に労働条件の合意ができなければ期間満了による退職となります。
5.上記3と4の関係
4の定年再雇用の有期雇用社員についても、原則、3の無期雇用転換制度が適用されますが、有期雇用特別措置法制定されたことにより、定年再雇用の有期雇用社員でその能力を有効に発揮し、有期雇用社員の特性に応じた雇用管理に関する特別な措置を行う旨の認定(第二種計画認定)を受けた企業(第二種認定事業主)に、定年後引き続き雇用される有期雇用社員については特例的な扱いとして無期転換制度の適用除外とすることになっています。第二種認定計画の申請について検討されることをお勧めします。