同一労働同一賃金への対応のために
2019.09「同一労働同一賃金」の実現に向け、改正パート・有期労働法が来年4月から施行され、各企業とも賃金をはじめとした諸制度の見直しを迫られています。今回は、そのための基本的な事項について解説します。
1.同一労働同一賃金の指針のおさらい
2018年12月に同一労働同一賃金の指針が公示され、3つの基準により「均等待遇」と「均衡待遇」の考え方が示されました。以下がその内容です。
- 職務内容(業務の内容、責任の重さ)
- 職務内容・配置転換の変更範囲(人材活用の仕組み、運用等)
- その他の事情
- 「均等待遇とは」
- (1)と(2)について、正規社員と非正規社員で差がなければ、同じ待遇が求められる。
(ただし、経験や能力、成果に応じ賃金に差が出ることは問題ない) - 「均衡待遇とは」
- (1)~(3)について、正規と非正規で違いがある場合は、その実態を考慮し、不合理な待遇差が生じることを禁止する。(非正規社員の賃金については、職務の内容、成果、意欲、能力、経験その他の就業実態を勘案して決定されるべき)
2.そもそも正規社員、非正規社員とは?
そもそも正規社員、非正規社員の区分、定義はどのようなものでしょう?おさらいしてみます。
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- 正規社員
- 期間の定めのないフルタイムで、長期雇用前提の労務管理のもと様々な経験させ、教育育成し、人財として活用し、将来の会社を担う役割を期待して採用された社員
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- 非正規社員
- 一定期間に特定の業務に従事することを前提に採用され、主に定型業務に従事し、現在の能力を職務に活かすことが求められ、中長期的な教育育成の対象とならない社員
3.多くの企業における非正規社員の実態
前述の2で正規社員、非正規社員のそもそもの定義を記載したが、非正規社員について多くの企業では、実態として正規社員と変わらぬ重要な業務や責任を求められる機会が多く、勤続期間も長期になっています。それに対し教育訓練や賃金といった処遇は、非正規社員であることを理由に正規社員よりも低い状態となっています。
4.まずは自社の現状分析から
同一労働同一賃金への対応のための制度改定に着手する前に、自社の正規社員、非正規社員の現状をよく知り、問題点を認識することが大切です。次のような事例に該当しませんか?
- 社員を雇用形態別(無期雇用、有期雇用:フルタイム勤務、短時間勤務)に4つのパターンに分類した際に、有期雇用でフルタイム勤務の社員の分布が非常に多い
- 社内で雇用形態別の社員の明確な定義がされていない(正社員、契約社員、パート、アルバイト)
- 正規社員の賃金制度が未整備で賃金決定のプロセスに明確なルールがない
- 最低賃金が引き上げられるたびに非正規社員の時給を見直す必要があり、時給改定の根拠が最低賃金となっている
5.今後の最低賃金の行方
政府は、最低賃金について毎年3%を引き上げ目標とし、最終的に全国平均1,000円を目指しています。
今後5年は最低賃金が引き上げられることになり、非正規社員の時給決定が最低賃金に連動している企業では、毎年相当額の時給昇給を行う必要があります。