戦略的な給与体系の見直し(2)(問題のある手当の払い方と給与の大きな区分)
2019.12今回は、給与の第2弾として各種手当について考えます。手当の法令上の区分と問題のある手当の設定と運用について解説します。会社が支給する手当の設定や運用に問題がないか確認してください。
各種手当について(その1)
(1)給与(手当)には大きな区分方法があります。
一口に給与と言っても、その性格により次のような大きなくくりに区分されます。会社の給与が適正に区分されているか確認してください。
- ア)基準内給与
基本給をはじめとして毎月決まって支給される固定的な給与で、その社員に支給するベースの給与となります。時間外や休日等の割増賃金計算の際の時給単価算出に算入する給与です。
例)役職手当、職務手当、能力手当、資格手当、営業手当、皆勤手当、無事故手当など- イ)基準外給与
時間外や休日勤務、深夜勤務に対する割増賃金や一定の要件に該当した場合に支給されることがある給与、歩合や出来高で計算し、金額が毎月変動する給与などが該当します。割増賃金の計算基礎からは除します。
例)時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当、日直手当、歩合給、大入袋など- ウ)その他の給与
社員が勤務するために負担する実費の弁済目的、職務遂行に関係なく、社員の生活を補助するために支給される手当を言います。割増賃金の算定基礎から除外してよい給与です。
例)通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、単身赴任手当、子女教育手当など- エ)賞与
臨時に支給され、または4カ月以上の間隔で支給される給与、手当を言います。月次給与の後払い、会社利益の社員還元、インセンティブなど賞与の考え方は、企業により様々です。
(2)こんな手当はありませんか?(3つ以上該当する場合は、手当の見直しが必要です。)
- なぜ支給しているのか、その根拠がよくわからない手当を支給している。
- 全社員に対して一律同額支給している手当がある。
- その都度、支給理由が変わる手当がある。
- どのような社員が支給対象者なのかわからない手当がある。
- 給与規程には規定があるが、だれにも支給されていない手当がある。
- 社員の実費負担の弁済や、経済的負担の補助する目的の手当であるのに、手当の額が実費負担や経済的負担に連動していない手当がある。(全社員に一律同額を支給している住宅手当など)
- 社員の残業代単価や残業時間数で算出していないのに、残業代として支給している手当がある。
- 賞与や退職金の算定基礎である基本給を上げないため、基本給の代わりに支給している支給要件や金額の決め方が不明確な手当がたくさんある。
- 固定残業代として全員一律に同額を支給している手当がある。
- 残業代計算の際の時給単価の算定に、本来は入れなければならないが、除外している手当がある。
- 会社の人事評価基準が成果、実績であるにもかかわらず、勤続手当や能力手当を支給している。
- 役職手当、職務手当や資格手当という名称の手当で、支給されないことがあったり、毎月金額が変動する手当がある。もしくは逆に歩合給なのに、毎月定額で支給される手当がある