令和2年4月1日からの人事労務関連の法令。制度の改正情報
2020.3今回は、令和2年4月1日より施行される人事労務関連の法令、制度の改正について解説します。
1.雇用保険料の免除廃止
(1)高年齢労働者(4月1日時点で64歳以上)雇用保険料の免除制度が廃止されます
現在、65歳以上の労働者も雇用保険の被保険者の対象となりますが、これまでは毎年4月1日時点で満64歳の高年齢の雇用保険被保険者の保険料が免除されていました。令和2年4月1日以降は、高年齢者についても他の被保険者同様、雇用保険料の納付が必要となります。
(2)実務上の注意点
- 4月1日支給の給与から64歳以上の社員についても給与から雇用保険料の控除を行ってください。併せて社員に対しては、制度改正及び保険料控除について通知しましょう。
- 労働保険料の申告(年度更新)にあたっては、令和元年度分の確定保険料の算定については、64歳以上の被保険者の保険料は免除されますが、令和2年度分の概算保険料については、64歳当該被保険者の賃金も保険料算定基礎に参入する必要がありますので注意が必要です。
2.民法改正による社員の身元保証人(身元保証書)の見直し
令和2年4月より改正民法が施行されこれに伴い人事労務においては、社員の身元保証人と取り交わす身元保証書の内容の見直しが必要となります。
(1)身元保証書とは?
身元保証書とは、会社と社員の身元保証人との間において、A)社員の身元がはっきりしていること の証明、B)社員として規則を守り誠実に勤務することの証明、C)在籍中に会社に損害を与えたときには、連帯して損害賠償をすることの証明についての保証契約を文書化した書類です。
(2)法改正の内容と趣旨
これまでは身元保証書の多くがA)及びB)の役割を主としており、C)の損害賠償責任については、どのような場合に、いくら損害賠償を請求できるか不明確であり、身元保証人自体もその義務や重要性を理解していないケースが多く、ある意味、形骸化したものとなっていました。しか今後は損害賠償の額に上限を決めなければならなくなり、身元保証の期間も原則、3年となります。形骸化している場合が多いとはいえ、損害賠償責任は、将来にわたってどのような内容かわからない損害を賠償することを保証するという厳しいものであり、無限の責任を負いかねないものであることから身元保証人の責任を限定することが法改正の大きな理由です。
(3)どのように身元保証書を見直すのか?
損害賠償で争いになった際には、身元保証人になった経緯や社員の職務実態の把握度合い、企業の監督責任、企業と社員の過失割合などを総合的に判断して裁判所が損害賠償額決定します。身元保証契約時点で具体的な金額の決め事をすることは困難で、あまりにも少額では、抑止力としての身元保証の意味がなくなり、あまりにも高額では身元保証人のなり手がいなくなるなどの問題が考えられ、その額の上限は「社員の給与額の一定期間(3年間程度)分」を基準として定めることが現実的と言われています。今後、会社としては身元保証書の運用については、つぎのいずれの対応を取るのか、根本的な検討が必要と言えます。ア)損害賠償額の上限を明確に定める運用に変えるイ)身元保証書は、上記(1)のA)又はB)の人物保証の目的のみに運用を変えるウ)身元保証書自体を廃止する。