社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
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令和3年4月法改正情報~70歳までの就業機会確保~

2021.2

前月に続き今年の法改正情報をご紹介します。少子高齢化による労働力減少や老後の資金不足当の問題がある中で、労働力を維持し、生涯現役社会の実現を目的とした「改正高年齢雇用安定法」について解説します。

はじめに令和2年6月1日現在の高齢者雇用状況調査をご紹介します。※集計対象は全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業164,151社です。

  1. 66歳以上では働ける制度のある企業は33.4%(対前年2.6ポイント増)
  2. 70歳以上で働ける制度のある企業は31.5%(対前年2.6ポイント増)
  3. 定年制廃止企業は2.7%(変動なし)

66歳以降も就業の機会を整備している企業が年々増えており、継続雇用制度(76.4%)を非常に多くの企業が採用しています。続いて、定年の引き上げ(20.9%)、定年制を廃止(2.7%)となります。また、31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約409万人であり、平成21年と比較すると、約193万人増加している中、高齢者の就業整備は急務と言えます。

現行では65歳までの雇用確保が義務となっています

60歳未満の定年禁止 (高年齢者雇用安定法第8条)
事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければなりません。
65歳までの雇用確保措置 (高年齢者雇用安定法第9条)
定年を65歳未満に定めている事業主は、(1)65歳までの定年引き上げ(2)定年制の廃止(3)65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入のいずれかの措置をしなければなりません。

改正法では70歳までの就業機会の確保(努力義務)(令和3年4月1日施行)

65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設されました

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    (a.事業主が自ら実施する社会貢献事業・b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業)
改正のポイント

3.は、今まで子会社や関連会社への継続雇用を対象としていましたが、関係事業主以外の他社への継続雇用も含まれることになりました。4.5.は会社に雇用されない働き方となります。労働者性が認められるような働き方にならないように注意が必要です(労災の適用外となります。)

今改正で求めているのは、希望する高年齢者が 70 歳まで働ける制度の導入であって、事業主に対して個々の労働者の希望に合致した就業条件を提示することまでは求めていません。事業主が合理的な裁量の範囲での労働条件を提示していれば、労働者と事業主との間で就業条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が措置を拒否したとしても、努力義務を満たしていないものとはなりません。継続雇用制度では、対象者発生時の経営状況や個人ごとに労働条件を決定したため、給与が高額すぎたり、好待遇となっているケースも多く見受けられます。70歳までの継続雇用制度に向けて画一的な制度の再確認求められています。

高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度の導入や高年齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入などを取り組まれた企業に対して助成金があります。(65歳超雇用推進助成金「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」)対象の有無など、弊所までお問い合わせください。