社会保険労務士事務所によくある問い合わせ(給与編)
2021.6私ども社労士事務所での業務は、クライアント様より寄せられる日々の社員トラブル・就業規則のご相談・手続きのご依頼・社会保険や労働保険、各種人事制度の構築に関するお問い合わせなど多岐にわたります。今月は、その中でもベスト3に入る「給与」についてお話します。
「社員にいくら給与を払うべきか」、「世間相場と自社の給与でどのぐらい差があるのか」、よくご質問を頂きます。まずは給与額を考えてしまいがちですが、ポイントは社員の「何」に価値を見出し、「何」に給与を支払うのかを明確にすることです。この「何」が明確になっていないと、給与を支給される社員はどうしたら給与が上がるのか不透明で、会社の給与決定方法に不信感を抱きかねません。
上記の「何」を明確し、その「何」に対して、支払う給与の種類や体系を定め、それらに値決めをしていきます。値決めには根拠が必要です。通常、様々な統計を金額の根拠に使用しますが、業種や規模別、年齢別のもの、民間の調査会社のデータもあれば、産業労働局より毎年発表される中小企業の賃金・退職金の統計、派遣法で主に使用される「賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金」「職業安定業務統計の求人賃金」など様々です。
社員の価値基準とそれに基づく給与体系設計を行い、統計から、業種・企業規模・勤続年数・年齢別の平均給与額等を根拠としながら、給与テーブルを設計します。給与設計は、大体6か月程度いただいています。
参考データとして、先日報道もされました、一般財団法人労務行政研究所の調査結果をご紹介します。
こちらの調査は、今年3月から4月にかけて東証1部上場する大手企業の210社の回答結果となります。
初任給の水準(全産業)は以下のとおりとなりました。
高校卒(事務・技術) | 172,049円 | 短大卒(事務) | 183,680円 |
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大学卒(事務・技術) | 213,003円 | 大学院卒修士 | 229,759円 |
なお、日本労働組合総連合会の2021年春季生活闘争方針では、初任給 18歳・高卒初任給は、175,400円と目標値を掲げています。今年は、コロナウィルスの影響もあり、初任給を前年度と同額に据え置きとしている企業が74.3%となりました。毎年、10月に最低賃金の改定と同様に、世間相場・競合社も確認し、社員価値基準による値決め(給与水準)に大きな齟齬がないか、確認していきたいところです。
その他手当の相場【住宅手当・家族手当の調査結果編】
※東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」(令和2年版)(平成30年版)引用住宅手当や家族手当など直接、職務や業務に関連しない手当を、同一労働同一賃金の対応のために見直しをされた企業も多いのではないでしょうか。平成30年版と令和2年版を比較してご紹介します。
住宅手当 | 平成3年 | 令和2年 |
---|---|---|
支給あり | 40.4% | 34.4% |
(一律支給) | 54.7% | 55.4% |
(一部支給) | 19.2% | 20.9% |
支給なし | 55.7% | 50.7% |
家族手当 | 平成30年 | 令和2年 |
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支給あり | 51.2% | 46.1% |
(一律支給) | 10.5% | 9.1% |
(一部支給) | 87.7% | 89.2% |
支給なし | 44.8% | 38.8% |
住宅手当は一律支給の場合、16,300円と平成30年と令和2年共にほぼ金額の差はありませんでした。
家族手当は一律支給の場合、10,623円から9,940円と減額 家族により異なる場合、配偶者10,733円から10,589円 子供に対する手当については、第一子10,733円から10,589円 第二子からは、5,300円でほぼ金額に差はありませんでした。これらの手当を支給する企業は減少傾向にあることが分かります。現在支給されている手当について、見直しをされてもよいかもしれません。