コロナ感染における社員への対応
2021.9新型コロナウィルスの感染爆発が止まりません。今回は、改めて社員や社員の家族等の感染について、その状況ごとの会社の対応の仕方と法律上の解釈をQ&Aで整理します。
1.社員に対する状況別コロナ対応
(1)社員にコロナ感染を疑う症状がある場合
- Q1:
- 熱はないがのどが痛いという社員を帰宅させ、数日間、自宅待機を指示することは問題ないか?
- A1:
- 今の状況下、会社としては考えられる対応かと思います。この場合の法的な扱いは、社員が勤務可能な状況で自宅待機させた場合、会社都合の休業となり、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。
自宅で業務をさせた場合は、在宅勤務として通常の給与を支給します。 - Q2:
- 社員から体調不良で休みたいという連絡があったので、PCR検査を受けるよう指示することは問題ないか?
- A2:
- コロナ感染が疑われる症状があるのであれば、検査を受けるよう指示することは問題ありません。最終的には本人の意思による受検となりますので強要はできません。また社員から体調不良による労務不能の意思表示がありましたので、通常の病気欠勤となります。
その後、PCR検査が陰性または症状が回復した場合で、尚且つ、しばらく自宅待機させるときはA1と同様の扱いになります。
(2)社員の家族等がコロナ感染した場合
- Q3:
- 社員から息子がコロナの陽性となったと連絡が来ました。この社員は自宅待機で問題ないか?
- A3:
- 保健所の指示に従うことになりますが、濃厚接触者と認定された場合は、指定された期間自宅待機させます。在宅でテレワークさせることは問題ありません。その場合は通常の給与を支払います。業務をさせない場合は、会社都合休業となり休業手当の支払いが必要です。この休業は他の要件を満たせば雇用調整助成金の対象となります。
社員が濃厚接触者にあたらない場合は、PCR検査を受けさせた上で社員が陰性であれば出勤させるというケースが多いです。
(3)PCR検査の結果待ちの社員がいる場合
- Q4:
- 子供を預けている保育園でコロナ陽性者が出たため、濃厚接触者ではないが自らPCR検査を受けた社員がおり、検査の結果が出るまで2日間出勤しなかった社員がいるが、自己都合の欠勤扱いで問題ないか?
- A4:
- 厚労省の「新型コロナウィルスに関するQ&A」では、会社が指示していない社員の自主的な休業は、通常の欠勤として扱い休業手当の支払いは不要としていますが、職場での感染等を考慮し自らPCR検査を受けているものであり、一定の考慮をしてあげることが望ましいでしょう。テレワークを認めたり、有給休暇を取得を促すなどは少なくともしたいところです。
(4)社員がPCR検査で陽性反応が出た場合
- Q5:
- PCR検査を受けた社員が陽性となったが、どのような対応が必要か?
- A5:
- 新型コロナは法律上、就業禁止となる感染症ですので、休んでいる間は、会社都合の休業ではなく、
通常の病欠と同じ扱いとなります。給与は無休で休業手当の支給も不要です。
社員は、健康保険の傷病手当金を受給することになりますので、その申請を行います。
職場に濃厚接触者がいる場合は、A3の対応となります。
濃厚接触者以外の社員で感染が危惧される場合も、A3後段と同様、念のためPCR検査を受けさせた上で社員が陰性であれば出勤させるというケースが多いです。
2.ワクチン接種に関する社員への対応
(5)ワクチン接種の推進
- Q6:
- ワクチン接種は、個人の自由意志であることは理解しているが、業務上必要な場合は、接種を指示しても良いか?
- A6:
- ワクチン接種を推奨することは問題ないが、指示や命令はできません。また接種しないことを理由に不利益な取り扱いもしてはいけません。会社として接種を促したいのであれば、接種のための時間も労働時間として給与を支払う、特別休暇を与える、特別手当を支給するなど、インセンティブを付けることは問題ないと思います。ただし、ワクチンを打ちたくてもアレルギーがあったり、持病の治療のため打てない人も一定数いることを考慮する必要があります。
(6)ワクチン休暇・手当について
- Q7:
- 接種後の副反応対応のため休暇を与えるべきか?
- A7:
- 副反応対応のための休暇は任意ですので、会社の考え方によります。会社としてワクチン接種を推奨したいのであれば、休暇の付与は接種を推進させる要因の一つになります。
接種日および翌日に特別休暇を付与し、副反応の程度は人によって異なりますので、3日目以降は年次有給休暇の取得を促すといったパターンが多いようです。 - Q8:
- 当社は接客業なのでワクチン接種者にワクチン手当を支給しようと思うが、差別に当たらないか?
- A8:
- ワクチン接種の自由意志を阻害するものではないので、一定程度の額であれば問題ないと考えます。
接種1回につき2,000円~5,000円程度の支給が妥当ではないでしょうか。
これもワクチンを打ちたくても打てない人に対する配慮は必要になります
(7)ワクチン接種の確認
- Q9:
- ワクチン接種の有無を社員に確認するために接種記録書のコピーを提出させることは問題ないか?
- A9:
- ワクチン接種の有無を確認する場合は、業務上の必要性がある場合のみとし、会社が全社員一律に申告させることは、接種の強要や接種有無による差別につながるので好ましくないと考えます。
A7やA8のインセンティブを設けることで接種を促すべきでしょう。 - Q10:
- ワクチン接種をした者だけ特定の業務につかせ、接種していない者は就かせないのは問題ないか?
- A10:
- 例えば接客業で感染防止策と顧客に安心感を与えるためワクチン接種の有無を確認し、接種した社員を就かせることは、会社の安全配慮、営業施策における裁量権の範囲と考えられます。ただし、ワクチン未接種を理由に業務から外したり、不当な人事異動を命じたり、人事考課でマイナス査定するなどは、裁量権を逸脱しているばかりか、ハラスメントと取られる可能性がありますので注意してください。