法改正情報 令和4年4月1日スタート
2021.12前月号に引き続き、来年4月1日に法改正予定の中で、60代の方を対象に改正が行われる(1)「在職老齢年金」と(2)「複数の企業でパート勤務される場合の雇用保険」の取り扱いについて、解説します。
1 在職老齢年金制度の見直し
高年齢雇用促進法により、65歳までの雇用を確保することが義務化され、70歳までの就労確保は、企業の努力義務とされています。給与を受け取りながら、年金を受給する場合は、年齢と金額により、年金額の一部または全部が支給停止されています。この制度を在職老齢年金制度といいます。
現在の60歳から64歳の在職老齢年金制度は
(1)年金額を12で割った額 (2)毎月賃金(標準報酬月額)+1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額)
(1)+(2)=28万円以下であれば、年金は停止されず、全額支給となりますが、28万円以上であれば、年金額は一部支給停止または全額停止されます。来年4月1日から、上記の基準額28万円が、47万円以下に引き上げられます。今まで、基準額28万円を念頭に労働時間を短く抑え、定年後の労働条件を設定する企業もあり、労働力の抑制につながっている現状に伴う改正となります。年金の受取額を気にせずに、企業で活躍の場が期待できそうです。※65歳以上の在職老齢年金制度の基準額47万円には変更はありません。
2 老齢年金受給開始時期の選択肢の拡大
現在、公的年金の受給開始時期は、原則として、個人が65歳(繰り上げ支給をした場合は、60歳)から70歳の間で自由に選ぶことができますが、受給開始時期を75歳の間で選択可能となります。75歳から受給を開始した場合は、年金月額は84%増額となる。(一か月あたり、0.7%増額)
3 65歳以上の複数就業者の雇用保険適用制度~雇用保険マルチジョブホルダー制度の新設~
雇用保険は、1つの事業所での1週間の所定労働時間20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みであることの適用要件を満たしたときに被保険者となります。定年退職後、多様な働き方が広がることを想定し、例外的な取り扱いとして、雇用保険マルチジョブホルダー制度が新設されます。
適用できる対象者
- 複数事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つ事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上あること
※1つの事業所における一週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であることが必要です。 - 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
受給できる給付について
- 失業給付…2つの事業所のうち1つの事業所のみを離職した場合でも受給が可能です。給付額は、離職した事業所の離職日以前6か月に支払われた賃金合計を180で割って算出した金額のおよそ5割~8割を1日分とし、被保険者期間が1年未満は30日分、1年以上は50日分の受給が可能です。
- 育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付等も受給対象となります。
手続き
労働者本人が会社に「雇用保険マルチジョブホルダー資格取得届」を就労の証明を依頼し、労働者本人が、居住する管轄のハローワークへ提出となります。本人がハローワークへ申し出を行った日から被保険者となり、保険料の徴収も開始されます。
注意点
この制度は、強制加入ではありません。本人が雇用保険に加入を希望し申し出ることにより、被保険者となることが可能です。会社は、マルチジョブホルダーの申し出を行ったことを理由に、解雇や雇止め労働条件の不利益変更など、不利益な取り扱いをしないよう注意してください。