社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

今年の最低賃金額改定の目安が発表されました

2022.9

日本では、都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCDの4ランクに分けて、引上げ額の目安を提示しています。現在のランク分けは下表のとおりです。

(参考)各都道府県に適用される目安のランク  ※厚生労働省HPより

ランク 都道府県
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島
北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡
青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

各都道府県の引上げ額の目安:Aランク31円、Bランク31円、Cランク30円、Dランク30円。

東京の現在の最低賃金は、1,041円のため、1,072円となります。現段階では目安金額ですので各都道府県の細かな金額は改めて発表されます。昨年の28円目安を上回る引き上げです。今後の採用時の時給はもちろん、既存の従業員の時給換算額が最低賃金を上回っているかなど、準備が必要です。この最低賃金の改定は、今年の10月1日勤務分より適用です。この予定額がそのまま反映された場合、最高(東京)と最低(沖縄県と高知県)の格差が222円にもなります。政府は最低額を1,000円に引き上げることを目指しています。

世界では最低賃金ってあるの?日本の最低賃金の制度が1959年スタートして63年。

全国平均の最低賃金額の上昇金額は、この10年わずかに181円です。変化する働き方改革の中、賃金は上がっていません。諸外国にも最低賃金制度を運用している国があり、制度の内容は様々です。

イギリス
全国一律に金額を決定(ただし、年齢による減額措置あり:16歳~22歳まで)
2年に1度改定4月改定 2020年4月:前年比上昇率 6.2%
韓国
全国一律に金額を決定 毎年1月に改定 2018年1月:前年比上昇率16.4%の大幅UPを行ったため、企業の倒産が相次ぐ。
ドイツ
2015年に法定最低賃金が導入。全国一律に賃金を決定。2019年のアンケートで、正確な最低賃金額を知っている労働者は20%。2019年1月:前年比上昇率 4.0% 

改定のタイミングも各国様々ではありますが、労働者の保護や失業などへの影響、企業に与える影響等を総合的に勘案して、決定しています。(※コロナの影響を受けた年の上昇率は、日本も含め1%程度)今年の日本の上昇率は、2.9%と過去最大ですが、世界に目を向けてみると、4%~6%上昇しています。上昇率が多い国ほど人への投資に力を入れている国とみることもできます。一昔前は、日本に海外から出稼ぎ労働者が来日し、自国に仕送りをすることがありました。円安の影響もありますが、日本で働いても、賃金が低すぎる理由から、日本に魅力を見いだせない状況になります。また、優秀な日本人の人材が、日本で働くより海外に進出した方がよいと考えるケースが増えています。労働力人口が激減する中、高年齢者への労働力を頼り、女性の活躍も進まない状況で、ますます優秀な人材の確保が困難となります。日本で働き続けたい、この会社で働き続けたいと思えるような、適正な賃金設定が必要かもしれません