今後の労働関係法制の見直しについて
2023.3今回は、今後、見直しが検討され改正法の施行が予定されています労働関係法制ついて、厚労省の労政審労働条件分科会(以下「分科会」という)の報告書の内容についてお伝えします。
1.有期雇用者の無期転換後の労働条件等を労働契約更新時の条件明示事項に追加
分科会は、報告書により有期雇用契約が更新により通算5年を超え無期雇用契約に転換できる「無期転換ルール」の一層の周知徹底と適切な活用に向けて制度見直しとして次にあげる提言を行いました。
- (1)
- 無期転換申込の機会と無期転換後の労働条件を、無期転換権が発生する契約更新時の労働条件明示事項に追加すること
- (2)
- 契約更新回数に上限の有無を雇入れ時の労働条件明示事項に追加すること
- (3)
- 最初の契約時以降に更新の上限回数を設ける、または更新上限回数を減らす場合は、その理由を労働者に事前説明すること
- (4)
- 無期転換後の労働条件について、他の無期労働者との均衡について考慮した事項の説明を努力義務とすること
2.業務内容や就業場所の変更の範囲を労働条件明示事項に追加
多様な正社員の普及を促す観点から、ジョブ型雇用(職務限定雇用)および勤務地限定雇用する労働者の雇入れ時の労働条件明示事項に業務内容及び就業場所の変更の範囲を追加し、労働条件の一層の明確を促すことを提言しました。
3.裁量労働制における対象業務の拡大と適正運用のための制度見直し
裁量労働制については、対象業務を拡大する一方で、制度趣旨に沿った適正な運用が図られるよう、次のような指摘・提言が分科会の報告されています。
- (1)
- 専門業務型裁量労働制の対象業務に「銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等(M&A)に関する考案および助言をする業務」(M&Aに関するコンサル業務)を追加すること
- (2)
- 専門業務型裁量労働制について労働者が制度を理解し、納得した上で働けるよう企業側が労働者に制度を説明し、労働者本人の同意をとることを適用要件とすること
- (3)
- (2)について、労働者の意志により任意に裁量労働制の適用から外れることを可能とすることを担保するための同意の撤回の手続を制度化すること
- (4)
- 企画業務型裁量労働制における労使委員会の実効性を確保すること
- (5)
- 専門業務型裁量労働制についても労使委員会を活用することが望ましいこと
- (6)
- 企業側は、裁量労働制の対象労働者に適用される賃金・人事評価制度の内容を説明することとし、労使委員会が情報を収集し運用の改善を求めることが出来ること
- (7)
- 適用対象労働者の健康・福祉措置として勤務間インターバルの確保、深夜勤務の回数制限の設定、労働時間の上限を設定、医師の面談指導を追加し、2つ以上の措置の実施を要件とすること
厚労省は、分科会からの上記1から3の報告書の提言を受け、関係法令を労政審に諮問し、令和6年4月からの改正施行を行う予定としています。