社会保険労務士法人 トレイン

人事・労務便り
人事・労務のポイント

育休者の業務は誰がフォローしていますか?育休者を支える側の環境を整えましょう

2024.03

ここ数日、今春も保育園に入園できず復職延期の従業員がいるとのお知らせをいただいています。今から8年前、「保育園落ちた、日本死ね」というセンセーショナルな言葉が国会で取り上げられ、その年の新語・流行語大賞にもノミネートされました。これを機に待機児童問題が改善された自治体もありましたが、依然として希望するタイミングでの入園に苦慮する保護者も多いようです。そしてこの問題は本人のみならず、経営側も期待していた労働力を欠きマネジメントに頭を悩ませ、また小規模な事業所では育休者の業務をフォローする「支える側」の社員にも大きな負荷がかかるということも実は非常に深刻です。育休を取る側だけでなく、それを支える側も気持ちよく働ける環境づくりとはどのようなものでしょうか。

今回はこの「支える側」の社員にスポットを当てて、他社事例や新しい支援策をご紹介いたします。

1、「支える側」の社員へ手当の支給を制度化~他社事例のご紹介

三井住友海上火災保険「育休職場応援手当」

育休者を抱えるチームのメンバーに、「社員が取得した育休の期間」と「職場の人数規模」の二つの要素で設定された手当一時金を支給。

例:社員の育休期間3か月以上、職場の人数規模13人以下で、メンバーに一人当たり10万円を支給

大和ハウスグループ株式会社GOOD PLACE「子育て休業応援手当」

育休者の担当業務の引継ぎ者に最高10万円/月の手当を支給。引継ぎ者が複数名いる場合は部門長がその10万円を割り振って支給。

上記のような取り組みもありますが、手当を支給するには原資と制度設計が必要です。支える側の社員を心配しながらも、まだまだ多くの企業で「いつも悪いねー、ありがとう」という声かけなどで済ませてしまっているのが現実ではないでしょうか。

そのようなお悩みを持つ皆様を資金面からバックアップする支援策も始まりました!

2、厚生労働省の新支援策のご紹介~令和6年1月より中小企業事業主向けに職場と家庭の両立支援等助成金で、育休中等業務代替支援コースがスタートしました。本コースは業務をフォロー・代替する社員への手当支給の助成や新規採用の助成です。

(1)手当支給等

  1. 手当支給等(育児休業):育休者の業務を代替する社員への手当支給に対する助成
    ・業務体制整備費5万円支給・支給手当の3/4(上限10万円/月)を12か月分支給
  2. 手当支給等(短時間勤務):育児短時間勤務者の業務を代替する社員への手当支給に対する助成
    ・業務体制整備費2万円支給・支給手当の3/4(上限3万円/月)を短時間勤務者の子が3歳まで支給

(2)新規雇用

育休者の業務代替のため新規で従業員(新規派遣を含む)を雇用する場合、業務代替期間に応じて支給
1か月以上3か月未満 27万円、 3か月以上6か月未満 45万円、 6か月以上 67.5万円
(1)(2)はいずれも、育休者や短時間勤務者が有期雇用労働者の場合、一人当たり10万円が加算
申請には育休期間や職場復帰における条件があります。

詳細は「育休中等業務代替支援コースの新設」001177133.pdf (mhlw.go.jp) をご参照ください。
従業員の働きやすい職場環境を作ることは、優秀な人材の確保につながります。これを機に育児休業等に関わる制度の見直しをしてみませんか?規程の改定や助成金の申請等もお気軽にご相談ください。