離職率を低下させるために~数字から見る現状と退職原因のミスマッチ解消を目指して
2024.061、新卒者の早期離職の現状
5月の大型連休明け、退職代行サービスを利用した新卒採用者の退職が急増していることがニュースで大きく取り上げられました。厚生労働省の発表によると、新規学卒就職者3年以内の離職率は、高卒就職者で37.0%(前年比+1.1P)、大卒就職者は32.3%(前年比+0.8P)と、新卒者の3人に1人が3年以内に退職するという状況です。このデータを過去30年ほどさかのぼって見てみると、以下のグラフのように新卒者の3年以内離職率は長らく30%代で推移しており、今のところ大きな変化がないことがわかります。
2、離職率の現状と人手不足倒産
では新卒者だけでなく、全世代の離職率はというと、厚生労働省は雇用動向調査の概況で令和4年離職率15.0%(前年比+1.1P)と発表しています。新卒者の離職率と同様に、劇的な上昇はありません。ところが帝国データバンクによると、従業員の退職や採用難、人件費高騰などに起因する「人手不足倒産」が、令和5年度に313件と過去最多(前年度の倍増)を更新しているそうです。全体的な離職率は例年並みの水準の中、離職率の高い一部の企業は人手不足倒産へ向かってしまうのです。人手不足倒産は事業自体がうまく進んでいるにも関わらず、退職者増により倒産に至ってしまうという非常に残念なケースです。採用の売り手市場の後押しで、今後は離職率が上昇していく可能性も十分にあり、採用の不調や離職率の高い会社はどんどん厳しい状況に立たされます。先手を打って離職防止の対策を講じ、安定した人材確保を進めていきましょう。
3、離職理由とその対策
前述の雇用動向調査で退職理由を見てみると、(1)労働条件(労働時間・休日・賃金等)、(2)職場環境(人間関係・ハラスメント等)、(3)働くことへの価値観の大きく分類して3つのミスマッチが存在しています。
上記(1)(2)はここ数年の働き方改革ですでに対応済みの会社も多いかと思いますが、実際に導入されている事例を改めていくつかご紹介いたします。
(1)労働条件の改善対策
テレワーク・フレックスタイム制度・副業の自由化・ワークシェア・社内ヒアリングによる福利厚生の導入・評価制度の見直しと可視化など
(2)職場環境の改善対策
1on1による社員間コミュニケーション・サポート先輩社員のメンター制度・社内イベント(社員ニーズに合わない場合は効果なしのため注意)、指導的立場である管理監督者層向け研修の徹底など
(3)働くことへの価値観の共有対策
社会経済の構造変化がもたらした価値観である、早期にキャリア資産を築きたい等の労働者の新しいニーズにうまく対応し、働き手から選ばれる会社となるために重要な項目です。
- 価値観の共有
価値観が多様な時代だからこそ、会社が目指す方向・その為に求める人材(スキル向上に取り組める、既成概念に捕らわれない、人を育成できるなど)・会社が重要視することとその優先順位を明確にすることで、採用の早い段階でミスマッチを防ぎます。
- ビジョンの共有
長期的な視点で3か月後・半年後・1年後・3年後、社員にどのように成長してほしいか、そのために会社は何を提供できるのかを明確にすることで、社員自身が常に自分の位置を把握し、長期で働くことのイメージを描きやすくし離職を防止します。
離職率が高いと、社内に優秀な人材が定着せず、生産性の低下、さらに企業イメージが落ち採用面でも不利になるという悪循環に陥りやすいです。上記の対策を取り入れながら、離職率の低下を目指していきましょう。
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