最近の人事労務管理関連トピックス
2024.07今回は、今年前半の人事労務関連トピックのうち、当法人に問い合わせの多い内容に関するものをいくつかご紹介します。
1.在宅勤務手当の残業代算定基礎への算入の是非
厚労省は、割増賃金の最低における「在宅勤務手当」の取扱いについて都道府県労働局に通達を出しました。在宅勤務手当が在宅勤務に必要な通信費やインターネット使用料などの実費を弁済するものとして支給される場合は、労基法上の賃金には算入しないというものです。ただし、「在宅勤務のため費用の実費済」するものとは、社員が使用した通信費等に在宅勤務の期間、実際在宅勤務日数などをもとに計算した実費用、もしくはこれら実費用に基づき計算した一定の額を支給することをいい、在宅勤務する社員に対し、負担した実費にかかわらず一律の額を支給し、または実費を超えた額を毎月支払う場合は賃金とみなされ残業代計算基礎への算入が必要になります。また、賃金規程に在宅勤務手当が実費弁済の手当であること、実費負担に基づく計算方法を記載し、残業代の算定基礎から除くことを明確に規定しておく必要があります。
2.定年再雇用後の基本給の設定
中央労働委員会による「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」による定年再雇用後の基本給(時給換算額)の対定年時比は次のおとりとなっています。
- (1)定年時と同じ
- ・・・全体の4.0%
- (2)定年時の80%以上100%未満
- ・・・3.4%
- (3)定年時の50%以上80%未満
- ・・・64.8%
- (4)その他
- ・・・27.8%
ちなみに定年退職後の所定労働時間は、定年時と同じが全体の77.2%となっています。
(調査は、対象企業が労働者数1000人以上の201社で令和5年夏に実施しております)
3.労基署の調査、同じ内容での2回目の違反指摘は、躊躇なく書類送検へ
厚労省は、各労基署に対して同様の違反を繰り返す事業場に対しは、行政指導ではなく司法警察権を行使し、是正勧告を受け改善を実施した事業場が、再度同じ項目で違反状態に陥った場合、今後、是正勧告は挟まず送検するよう通達しました。(令和6・2・13基発0213第2号)
司法警察権限の行使については、同様に違反を繰り返す事業場への対応として、「過去に重大・悪質な法違反が認められたにもかかわらず、遵法状況の定着が確認されないケースについては「躊躇なく司法警察権を行使する」とした。
労働新聞社による情報公開請求の結果によると、労基署の調査・指導における重点課題は次の3点です。
- 改正法に基づく長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止
- 中小企業と時間外労働の上限規制の適用が始まった業種・業務の事業場に対する一般労働条件の確保・改善対策
- 管内の労働災害の発生状況に応じた防災
過去に労基署の調査を受け、上記課題について是正勧告をうけ、その是正報告に数カ月から1年程度要した事業場は、通常、是正報告修了後、1年から3年程度で、再度、労基署が調査に入るケースがあります。是正報告のためだけに一時的な改善で終わらせ、再び法違反状態になっていることが判明した事業場は、行政指導を挟まず書類送検するケースが増えてくると思われ、現に今年3月、三重・四日市労基署が繰り返しの違反に対し、是正勧告を挟まず送検しています。